第三十四話 征途
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・モーデル
艦隊はフェザーンに向かっている。今のところは特に問題は無いらしい。もっとも帝国領内を航行しているだけだから当たり前の事だけど。黒姫の頭領は指揮官席に座って宇宙空間を映しているスクリーンを見ている。そして参謀長を始め司令部要員は指揮官席の後ろに用意された席に座っている。
指揮官席の後ろには席だけじゃない、打ち合わせが出来るようにテーブルも用意されている。必要とあれば頭領は指揮官席を回すだけで参謀長達と打ち合わせが出来る。便利だと思うけど普通はテーブルも席も無いらしい。参謀達は指揮官席の周囲で直立して待機する事になっている。慣れないせいだろう、皆困っているようだ。
僕も末席に座る事を許された。楽なんだけどちょっと手持無沙汰だ。もしかすると皆もそうなのかもしれない。でもメルカッツ参謀長だけは時々ホッとした様な表情をする時が有る。やっぱり立っているのが辛いのかな。旧知のリンザー大尉にこっそり話したら大尉はクスッと笑って誰にも言うんじゃないぞ、って言われた。
リンザー大尉とはキフォイザー星域の会戦で一緒だった。あの戦いは酷かった。味方であるはずのリッテンハイム侯に攻撃されリンザー大尉は負傷、僕はどうして良いか分からずおろおろするばかりだった。そんな僕達を助けてくれたのが黒姫一家の人達だった。
海賊だから漠然と怖いのかなと思ってたけど皆優しい人達だった。その時にキルヒアイス提督にリッテンハイム侯の追撃よりも負傷者の救助を優先するようにと進言したのが黒姫の頭領だと聞いた。あれ以来リンザー大尉と僕は時々連絡を取り合っていたけど今回、頭領が艦隊を率いると聞いて二人で志願した。あの時の恩返しをしたいし、それに黒姫の頭領がどんな人か興味も有った。
頭領は不思議な人だ。有名な海賊だけど指揮官席に座っている様子は穏やかでとても海賊には見えない。本当は“提督”とか“閣下”って呼ばなければいけないんだろうけど頭領が嫌がった。そんな風に呼ばれても嬉しくないそうだ。僕なら嬉しいけどな、頭領はちょっと変わっている。
軍服も着ていない。ワイシャツとズボン、それと上着にピーコートを身につけている。多分ズボンは防寒だろう。それとレッグホルスター。キフォイザーで僕を助けてくれた人達と同じ姿だ。黒姫一家の制服なのかもしれない。レッグホルスターに収められたブラスターにはエイの皮が貼ってある。今帝国軍の高級将官の間ではブラスターにエイの皮を貼るのが流行っているらしいけど、これって黒姫の頭領の真似だそうだ。
「ミュラー艦隊から通信が入っています」
オペレータが声を上げると頭領が“スクリーンに映してください”と答えた。スクリーンに穏やかな表情の男性が映った。ミュラー提督だ。僕の席からは頭領の後ろ姿しか見えない、でも多分喜んでいるだろうな。二人
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