第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
食べられて、キスされて、殴って
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初対面のはずだ。あれだけ印象に残りやすい少女なら嫌でもシキは覚えている。
少女はシキのことをよく知っていたようだった。親しい仲なのだと思う。でなければ、キスなんて行為に……行為に。
「ッ〜〜〜〜!?」
そこまで考えてシキの顔が真っ赤になる。
『そういう』知識はまだないが、キスくらいは年相応に興味があるのだ。
さらに初めてで、あそこまでの美女(本人談だが間違っていない)にされれば嫌でも意識してしまう。
夢だと断言するには、少女の唇は柔らかった。
だとすると、ここは現実ということになるのだが、何がどうしてこんな場所にいるのかという疑問が膨れ上がってくる。
「……まっ、出てから考えるか」
試しにシキは拳を握ってみる。
開いて握って振って、その動作を何回も繰り返す。
シキは考えるのが苦手だ。頭は悪いわけではないが、回りくどいやり方は性に合わない。父親であるデルクがそうだし、レイフォンもそうであるから、ある意味サイハーデンの特性なのかもしれない、とシキは苦笑した。
「たく、俺もバカだなぁ」
ニヤリと笑いながら、シキは握った拳を引く。
相変わらず剄を練ることはできない。だが、それがどうしたというのだろうか?
シキの根本になっているのは、サイハーデンの教え、つまりは最後の最後まで生き残るための努力だ。
だからこそ、生きるための努力をする。
「ふー……だぁあああああっ!!」
息を吐き、力任せにシキは拳を地面と思われる場所を殴った。
ピシリと、漆黒の空間に白い罅が入る。それは徐々に大きくなり、シキの視界いっぱいに広がる。
そして完全に空間が破壊され、風景がガラリと変わる。
そこには頬を引き攣りながら、こちらを見る。
腹部が物凄い痛みを発しているが、無視して相手を見る。
青年程度の身なりのいい武芸者だ。もしかしたらそれ相応の地位の持ち主かもしれないとシキは当たりを付けた。
さらによく見ると、青年の手に持っている錬金鋼がシキの腹部を貫いていた。
シキはギロリと青年を睨むと、久々に練った剄を纏わせた拳を相手の鼻先に近づける。
「お返しだ」
次の瞬間、シキの容赦ない打撃が青年の身体を空中に吹っ飛ばした。
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