第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
食べられて、キスされて、殴って
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ている生物はおるまい。
「あぁあああああああっ!!」
レイフォンは轟剣にしていた剄を、内部の四方に分散して浸透させる。
剄が浸透したことを確認したレイフォンは、そのまま衝剄を放ち口から脱出する。次の瞬間、上の顎がバラバラに切り刻まれた。
空中でバランスを取りながら、レイフォンは上手くいったことに安堵した。
未完成天剣技、桜。
今はまだ未完成だが、将来完成し、幾度もレイフォンの危機を救うために振るわれる剄技の前身が今、振るわれた。
半身を失った老生体は苦悶の声をあげる。
無理もないだろう。人間で言うなら、気づいたら上半身がバラバラに引き裂かれたようなものだ。痛みなど想像を絶するものだろう。
「シッ!!」
チャンスだとレイフォンは思った。
敵は重傷を負った。驚異的な回復力を持った老生体といえども、もう一度今の攻撃を加えれば倒せる、そう思った。
事実、レイフォンは追撃に向かった。
油断はなかった。全身には剄が漲り、最高のタイミングで斬りかかっていた。
刀はもう一体の老生体を両断し、速やかに生命活動を止める……はずだった。
『退避してください、レイフォンさん』
「えっ?」
刀が届く直前、デルボネの珍しく焦った声がレイフォンの耳に聞こえた。
そしてレイフォンの視界が真っ暗になった。
『まさか……もう一体いたとは』
「珍しいな、婆さんが見逃すとは」
レイフォンの戦いを見ていた二人は、状況を冷静に見極めていた。
簡潔に言えば、レイフォンは地下から出てきた大型の汚染獣に戦っていた汚染獣共々丸呑みされたのだ。
『生体反応は……ありますね。しかし、なぜ事前に察知できなかったのでしょうか』
「わからん。だがスーツを着込めば、汚染獣の体内でも数時間は生き残れる。これは事実だ」
『えぇ、しかし死ぬのには早すぎる歳ですよ』
デルボネは寂しそうに言う。
天剣になり、数多くの武芸者を見てきたデルボネはその分だけ死を見てきた。
感情が希薄である念威も、感情がないわけではない。むしろ出ない分、出た時の反動は大きいものがある。
あが、そんな感傷はリンテンスには無意味だった。
「都市が滅びれば、そういった奴らが理不尽に殺される。それから守るのが武芸者である俺たちの役目だ。弱い武芸者なぞ、存在価値すらない」
ふと、リンテンスの脳裏にはとある都市の記憶が蘇ったが、くだらないとすぐに忘れた。
『弟子なのでしょう?』
「あいつが勝手に来ただけだ。弟子はあいつだけで十分だ」
『素直じゃないですね』
コロコロとデルボネが笑うとリンテンスは不機嫌そうだった顔を、さらに不機嫌で上乗せする。
その間も状況は逐一変わっていく。
レイフォンを飲み込んだ老生体は、進路をグレンダンに向けたからだ
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