第一章 グレンダン編
道化師は手の中で踊る
食べられて、キスされて、殴って
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荒野は名前のとおり荒れている。
管理していない地面がどうなるのか、移動都市にいる住人は外縁部から外を覗けば知ることができる。
汚染物質のせいで自然が育たない地面は硬く、戦闘衣に合わせて作られた靴でもその感触は嫌でもわかる。
レイフォンは荒野に目を向ける。標的は当に視認していた。
慎重に、なおかつ大胆に着地したレイフォンは腰に付いている錬金鋼に手を伸ばす。
手に持ったのは、天剣ではなくシキが使っていた刀だった。
なぜ、天剣を使わないのか? 理由は二つある。
一つはシキの武器で初めての老生体を倒すことで、彼への見舞いの品にすること。
もう一つは天剣の調整不足が理由だ。
レイフォンは天剣の設定を何一ついじっていない。完全に自業自得の形となって出てしまったのだが、そのくらいのハンデは欲しかったところだから問題はない。
そうしているといよいよ、老生体の全貌が見えてきた。グレンダンの地下に通るパイプよりも太い胴体、半透明の羽に異様に長い顎からレイフォンよりも大きな牙が見えている。目は緑色のガラス玉のような目だった。
そこでデルボネの声がレイフォンの耳に届いた。
『あらあら、この老生体繋がっているように見えて、二体みたいですね』
「え? そうですか」
『えぇ、油断は禁物ですよ? 相手は老生体なんですから』
「わかりました」
レイフォンは剄を刀に収束させていく。
リンテンスとの訓練が功を奏したのか、以前よりも剄のコントロールが上手くなっている。今なら無茶な姿勢で斬っても刀は思うどおりに斬ってくれるような気がした。
最後にデルボネはこう呟いて、上空に端子を退避させた。
『では、良い戦場を』
それを区切りに、老生体は急降下しレイフォンを捕食しようと迫ってきた。
レイフォンは足に力を込め、跳躍した。
下の顎は地面を削り取りながら、上の顎がレイフォンを追う。
何時かに戦った老生体の触手の動きを思い出しながら、レイフォンは空中で身体を捻って重力に従って、落下した。
老生体はなんの躊躇なく上の顎の口を開ける。余裕でレイフォンを飲み込める大きさだが、レイフォンは臆せず、その口に飛び込んだ。
そして飲み込まれる瞬間に、貯めていた剄を開放する。
外力系衝剄の変化、轟剣。
一気に質量を増大させた刀は老生体の喉奥に突き刺さる。
絶叫が響き、レイフォンは吹き飛ばされそうになる。
だが、レイフォンは力負けしないように背中から剄を爆発させる。
外力系衝剄の変化、背狼衝。
背後に放った衝剄の反動を利用して、さらに奥に刀を押し込む。
血しぶきがレイフォンに降りかかるが、それに気にせず、レイフォンはさらに追い討ちをかける。
老生体のタフネスさはわかっている。だが、内部から切り刻まれて生き
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