Episode 4 根菜戦争
嵐の前の静かなる朝食
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のなんて料理? 初めて見る」
「あぁ、これか」
興味を引かれたカリーナがそんな疑問を口にすると、キシリアは今更のように料理の名前を告げていないことに気が付いた。
「俺の故郷にあるトルコと言う国の料理で、"赤レンズ豆の団子"という料理だ」
そう告げながら、キシリアはこの豆団子をまいて食べるためのレタスを別の皿に盛り付ける。
「本当はメインで食べるものじゃなくて"前菜"として出すものなんだが、まぁ、朝だしこれぐらいで調子度いいだろ。 ちなみにカリーナはそこの中辛のヤツな」
「むぅ……お子様扱いは失礼だと思う」
「じゃあ、俺とクリストハルト用の激辛のやつを一緒に食べるか?」
「……やだ」
むくれながらキシリアの傍を離れるカリーナを見て、キシリアは一緒に住む家族がいた事に心から感謝していた。
まさに彼等は、このささくれ立った心を癒す特効薬だ。
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「……で? 何をそんなに苛立っていたんだ?」
食事が終盤に差し掛かった頃、いつものように向こう見ずなクリストハルトがそう話を切り出した。
その瞬間、キシリアの顔が目に見えて曇り始める。
「まぁ、なんというかな。 端的に言うと……」
――戦争が起きる。
あまり大きくも無い声で、キシリアはボソリとそう呟いた。
「えらく物騒な話だな、おい」
「……ハルト、顔が笑っている」
思わず身を乗り出したクリストハルトを、カリーナが肘でつついて牽制するが、根っからの戦闘狂はそう簡単に収まりが付かない。
「で、原因は何だニャ? キシリアが巻き込まれるなら、ニャーたちも無関係と言うのは難しいニャ。 自分らが巻き込まれる可能性があるなら、その理由とかは聞いておきたいニャ」
「もっともな意見だな」
渋い顔をするマルに、キシリアはゆっくりと頷く。
彼等ケットシーは、個人の喧嘩は頻繁に行うものの、戦争などと言う文化とは基本的に相容れない存在だ。
なんでも、戦争の醜さは彼等の美的感覚にあわないらしい。
そしてキシリアは、しばらく無言で言葉を選ぶと、唐突にこう切り出した。
「なぁ、焼畑農業ってしってるか?」
それは最初から知らないことを前提とした問いかけだった。
さすがに人であるカリーナとクリストハルトは聞いたことがあったらしい。
もっとも、戦闘ばかりに明け暮れていた彼等に農業についての詳しい知識などあるはずもなく、あぁ、そんなものもあったなと言わんばかりの表情でキシリアの言葉に耳を傾けている。
「知らないニャ。 つーか、土弄りに興味ないニャ」
案の定、マルは興味をそがれたような声で小さく欠伸を返してきた。
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