最終章
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三人はゆっくりと倉庫に近付いていった。倉庫の鉄の扉はぴったりと閉じられている。榊原が扉に忍び寄り、耳をあてたが、何も聞こえない。石田に囁く。
「よし、韮沢に電話をいれてくれ。ここの住所を知らせるんだ。」
石田がリダイヤルを押す。相手はすぐに出た。息せき切って話し出した。
「地下室が開いて、二人を救出した。元気だ。洋介君の遺体も発見された。そ、そ、それに小野寺親子の身柄も保護した。」
「よし、俺達が言ったことが真実だとわかっただろう。」
「ああ、方面本部長が北のスパイだってこと以外はな。」
「まだ、そんなことを言っているのか。兎に角、」
突然クラクションの音が響いた。石田が振り向くと、白のクラウンが入ってくる。運転する男と目があった。初老の学者タイプの男だ。再びクラクションが鳴らされた。榊原が叫んだ、「やばい逃げろ。」鉄の扉が内側から開き始める。
三人は倉庫と塀の路地に逃げ込んだ。塀にそって30メートルほど走った時だ。後ろから銃声が響いた。石田の前を走っていた親父さんが倒れた。石田が駆けより、親父さんの右手に握られた銃を取り、振り向きざま撃ち返した。親父さんは起きあがろうとするが、脛の横を打ち抜かれおり、がくっと膝を折った。石田が声を張り上げた。
「親父さん、私の肩に掴まって下さい。」
榊原も引き返してきて、銃を構えている。親父さんが叫んだ。
「ワシに構うな。二人で行け。」
榊原が銃を発射した。
「奴等だってこんな爺さんをやたら殺したりせん。大丈夫だ。行け。」
榊原が叫んだ。
「石田、石田、その先に階段がある。倉庫の二階に上がれる。そこから下に通じているかもしれん。親父の言うとおりにしよう。大丈夫だ。親父、身を横たえていろ。」
榊原が駆け出した。石田も、「よしっ」と言ってそれに続いた。
二人は階段を駆け上がった。鉄のドアがある。ノブを回すと鍵がかかっている。榊原がポケットからキーホルダーを取り出し、金属の細い棒を鍵穴にねじ込んで回し始めた。
「石田、下を見張ってくれ。」
階段の下に男の姿が現れた。石田は引き金を引いた。銃声が響き、男が仰け反って倒れた。
「石田、開いたぞ。」
そう言ってドアを開けた。石田が先に入った。中に入った途端、男と鉢合わせになった。殆どぶつかる寸前だった。男は二階の物音に気付き、階段を上がってきたのだ。石田は男の鳩尾を銃身で刺すように突いた。
男は持っていた銃を床に落とし、胸を押さえて屈み込む。階段の途中で銃を構える男が見えた。咄嗟に屈みこむ男の肩をつかんで立たせると、階段の男めがけて押しやった。
二人の男が折り重なるようにして階段下まで転げおちた。一斉に銃弾が二人めがけて発射された。二人は床に伏せた。床の幅は3メートル。鉄の手摺が倉庫
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