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シンクロニシティ10
最終章
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ットから取り出し、耳に当てた。それは小さな低い声だ。
「ジン?」
 さわさわと鳥肌が体全体に広がるのが分かった。胸の鼓動は激しく高鳴っているのに、体温が急激に低下した。しかし、同時に瞳が潤んだ。心の底からこみ上げるものがあった。懐かしさと愛おしさが溢れた。石田が叫んだ。
「和代。」
榊原が怯えて壁際に背中を寄せ、つま先立っている。もうそれ以上、下がれない。震え声で呟いた。
「お、お、お礼なんて、い、いいのに。」
親父さんはベッドの手摺をぎゅっと握り締めた。受話器から声が漏れた。
「仁?パパなの?」
石田の体から力が抜けてゆく。そして喜びがこみ上げてくる。そして再び叫んだ。
「そうだ、パパだ。知美、パパだぞ。ずっと探していたんだ。僕の可愛い可愛い知美。今何処にいるんだ。」
「わー、やっぱりパパなのね。今日、ママが携帯忘れていったの。それをいじっていたら、ひらがなで“じん”てかいてあったの。だからボタンをおしたらやっぱり、パパだったのね。」
「みんな元気でいるのか。」
「じいちゃんが死んだの。」
「いつ?」
「ずっとまえ、みんなで泣いたの。悲しかった。」
「ねえ、知美、いったい何処にいるんだ。すぐに迎えに行きたいんだ。」
「私、分からないの、住所とかそういうことは、私には無理よ。だって、まだ幼稚園よ。ちょっと待って、おばあちゃんに代わる。」
 おばあちゃんと叫ぶ知美の声が遠ざかる。石田は涙を堪えながら、榊原親子に微笑みかけた。親子はほっとしたように胸をなでおろし、緊張を解くと、良かった良かったと互いに頷きあっていた。心から喜んでいるようだ。しかし何故か二人とも疲れ切った様子だ。

事件直後、榊原が言った言葉がある。こうだ。
「結局、ワシが上村組の事件と二つの強盗殺人事件に興味を持ったってことは、お前さんのいう、シンクロニシティってことになる。そうじゃないのか。」
石田は笑って答えた。「そうかもしれない。」と。
しかし、その石田さえ、気付かぬシンクロニシティが、この話の続きにはあったのである。シンクロニシティとは、みながそれと気付かずに見過ごしているだけなのである。実を言えば、この世はシンクロニシティに溢れている。

 杉村マコトの視線は密かに亜由美の後姿に注がれている。かつて、「マコトの男」と友に賞賛された杉村の人生はけっして平坦ではなかった。二年ほど前、錦を飾るでもなく故郷に舞い戻った。そして友の経営する地元スーパーに就職して、ようやく生活も落ち付いてきたのである。
 店は人でごった返していた。ちらりと亜由美に視線を戻し、おやっと思った。亜由美の様子がおかしい。レジは長蛇の列だ。亜由美の前にいる中年のお客がその顔を覗き込み、声を掛けた。
「あんた、大丈夫。何を泣
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