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シンクロニシティ10
最終章
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ことも可能だ。強行突破しろ。いいか、パトカーと警官を蹴散らして、何としてもMDとフロッピーを例の男に渡すんだ、いいな。俺達はドサクサに紛れて、ここを脱出する」
石田が携帯に声を押し殺して言った。
「鉄扉の前のパトカーを後退させろ。強行突破するつもりだ。いいか、二三台、後方に移動させて追跡出来る体制を整えろ。」
もう一台の電話に向かって韮沢が怒鳴り声を上げているのが聞こえる。男達がバンの中に消えてゆく。バンがゆっくり動き出し、方向転換している。高嶋と石川が、声を掛け合い、鉄の扉を左右に引き始めた。
 間に合うかどうか、鉄の扉が徐々に開かれてゆく。扉の前のパトカーが後方にバックしているのが見える。扉が開き切ると、そこにはバンが通れるほどの幅の開かれている。バックしたパトカーがエンジンを響かせ、追跡準備を整えている。
 バンはハンドルを左右に振って、何台ものパトカーにぶつかりながら通りに出た。それを待っていたかのようにパトカーが三台サイレンを響かせ後を追う。逃げ切れるものではない。サイレンが遠ざかる。
 黒のセドリックの後ろに隠れていた高嶋と石川がポケットから警察手帳を引き出し、高く掲げた。高嶋が石川の左脇に右肩をいれて歩き出した。高嶋が叫んだ。
「高嶋方面本部長だ。中に二人の警官殺しで指名手配中の榊原警部補がいる。すぐに逮捕するんだ。彼と撃ち合って捜査一課の石川警部が撃たれた。おい、そこの警官手を貸せ。」
皆黙って拳銃を向けている。
「おい、分からんのか。高嶋方面本部長だ。この顔に覚えがあるだろう。この警察手帳を見ろ。」
 またしても、静寂が返ってくる。戸惑ったままの警官達の視線が、高嶋には不気味に映った。戸惑ったのなら、すぐに直立不動の姿勢をとるはずなのだ。それがキャリアに対するノンキャリアの普通の態度なのだ。しかし、彼等は微動だにしない。冷やりとする感覚が背筋に流れた。
 石田らは階段を降りてセドリックの背後で様子を覗っていた。韮沢の怒鳴り声が小さく響く。石田は携帯を耳に当てた。
「奴に何て言ったらいいんだ。警邏隊の隊長が聞いてきている。」
石田が答えた。
「こう言うんだ。パクサンスンお前を逮捕するとな。そして、、、」
「そして何です。」
「何でもない、兎に角、そう言えばいいんだ。」
 パクサンスイ、三人目の少年の名前だ。その名前を出せば、奴は恐らく自らを始末する。和代の復讐が成就するのだ。韮沢が電話の相手にその名前を怒鳴った。そして最後にこう付け加えた。
「兎に角、全責任は俺がを取る。今言った通り方面本部長に宣告して手錠をかけろ。」
パトカーの最前列でマイクを握り締め、韮沢と電話で話していたと思われる警官が、にやりとしてマイクに向かってがなる声が響いた。
「第六警邏隊隊長、篠塚
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