最終章
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いように縛るんだ。そしてこいつら楯にあの二人の所まで行って、息の根を止めてこい。」
笹岡はにやにやしながら、言った。
「人間の楯か、こいつはいいや。よし、上に着いて二人を始末したらこいつら二人も殺っちまおう。」
小野寺と親父さんは首と腰をロープで縛られた。二人は横に抱き会うようにして歩きはじめた。ゆっくりとした足取りだ。石田は心の中で叫んだ、「もっとゆっくり歩け。」と。
笹岡はその二人の陰にかくれて階段に向かう。途中で親父さんが膝を折って、崩れかかる。笹岡の顔が一瞬覗いた。石田は狙いをすましていたが、撃つには至らなかった。榊原は顔面蒼白だ。笹岡が階段の下で銃を構える男に声をかけた。
「村井はやられたのか。」
「ええ、胸に一発くらって即死です。」
「ふーん、運のねえ奴だ。どうする、この役、お前がやるか。村井の弔い合戦だ。一度やれば度胸もつく。どうする。」
「いえ、親父さん、お願いします。俺にはまだ、無理っす。」
「ちぇ、度胸のねえ野郎だ。おい、榊原、そこを動くんじゃねえぞ。これから階段を上がる。撃てるものなら撃て。こっちは一向に構わん。」
二人が肩を寄せ合い、階段を上り始めた。笹岡は二人の背中の影に隠れ、寄せられた首の間から銃身を覗かせてる。
石田は、瞬間的に頭を出し、様子を覗った。少しの隙でも撃とうと考えていたが、笹岡はその大きな体をうまく隠している。ましてチャンスは一瞬でしかなく、榊原に誉められた腕をもってしてもチャンスを生かすことなど不可能だ。
脂汗が額を流れ目に入る。何度も目を瞬かせ、顔をだしては隙を覗った。うしろで榊原が言った。
「どうする。」
「どうしようもない。笹岡は二人の首の間から銃身を出して狙っている。最悪の場合、親父さんか石田さんに当たるかもしれないが、脚の間を狙う。それしか方法はない。」
「馬鹿野郎、駄目だ。銃を構えて、顔を出した瞬間に、お前は撃たれる。さっきのはまぐれ当たりだ。いくら誉められたからといって生意気言うんじゃない。」
「だったら、どうする。」
階段を上がる足音が一歩一歩近づいている。脂汗を拭おうともせず、二人は階段の方を見詰めていた。
その時だ、倉庫の外でサイレンが響いた。けたたましい大音響だ。笹岡は入り口の方を首を傾けて覗いた。その瞬間、小野寺が笹岡の胸に足あてて後ろに蹴った。笹岡は背中から落ちていった。小野寺と親父さんが駆けあがってくる。
石田は下方に銃を向けて笹岡の動きを見張った。二人が登り切ると、笹岡が起きあがりバンの方に駆けて行くのが見えた。もう一人の男もそれに従っている。高嶋が焦って声を張り上げた。
「パトカーに包囲されている。おい、全員バンに乗れ、俺と石川が扉を開く。この鋼鉄製のバンは銃弾も弾き返す、パトカーの二三台潰す
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