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シンクロニシティ10
最終章
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を一周してる。幸い階段は一つだ。
 石田は後戻りして、鉄のドアの錠前を閉めた。階段下に人の気配がする。二人の男が息を吹き返し、様子を覗っているのだ。下で誰かが叫んだ。
「おい、爺をひっ捕らえた。顔を出して見るんだ。」
榊原が手摺の間から下を見ると、飯島が親父さんの禿げ頭に銃を突きつけている。親父が叫んだ。
「成人、言うことを聞いちゃいかん。ワシは命などこれっぽっちも惜しくない。ここで死ねれば本望だ。絶対に言うことを聞くな。」
飯島が親父をこずいて怒鳴った。
「おい、榊原、俺にそれが出来ないと思ったら大間違いだ。俺は人殺しなどなんとも思わん。いいか、これは脅しじゃない。」
「成人、わしは母さんが死んでからというもの生きる屍になってしまった。母さんと旅をしたかったんだ。だから位牌を持って旅を続けてきた。」
がつんという鈍い音がした。飯島が叫んだ。
「この後に及んで、ホームドラマやってんじゃねえ、この糞爺が。」
「いてててて、酷いことしやがる。いてててて、せっかくいいところだったのに。ててて。」
「威勢のいいこと言っていたわりに、だらしねえ。」
親父さんが呟いた。
「ワシは、命など惜しくないが、痛いのは嫌いなんだ。」
這いつくばる親父に向けて飯島は銃を向けている。その時、大型バンの横の引き戸が開かれた。高嶋方面本部長が降り立った。
「静かにしろ、飯島。先生が怖がっている。あと5分待て、先生を送り出してから片をつければいい。二階のドアは見張りをつけてあるのか。」
飯島が答えて言う。
「ええ、大丈夫です。兎に角、今しばらくは静かにしていましょう。」
高嶋は、よし、と言って、また車に戻った。車の陰に、石川警部が隠れているのが見える。
石田がジャケットの左ポケットから携帯を取りだし耳に押し当てた。
「おーい、おーい。」という韮沢の間の抜けた声が聞こえてきた。これまでの緊迫した状況をつぶさに聞いていたはずで、何度も呼びかけてきたに違いない。
「おい、どんなに状況が緊迫しているか分かったか。」
突然の反応に驚いて、韮沢がどもりながら答えた。
「わわわ、分かった、分かった。すすす、すぐに緊急手配する。パトカーを急行させる。住所を言ってくれ。」
住所と倉庫名を言って、石田が言った。
「大至急だ。頼む。それから、テープは回っているか。」
「ああ、回しっぱなしだ。」
「そのまま聞いていてくれ。」
石田が下に向かって怒鳴った。
「おい、飯島、何故、洋介君を殺した。」
「殺したのは、俺じゃねえ。そんなこと分かるか。」
石田が声を押し殺し、韮沢に話しかけた。
「どうだ、今の会話が聞こえたか。」
「音は悪いが、何とか聞こえる。」
「分かった。兎に角、ボリュー
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