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シンクロニシティ10
第二十一章
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 小野寺の話しは衝撃的だった。そんなことが本当にあり得るのかというような内容だ。三人は、じっと聞き入った。
小野寺は、柏崎で北朝鮮からやってきたという三人の少年達に日本語の発音を徹底的に教えた。彼等は語学の天才で母国語と日本語以外に3ヶ国語を話したという。三ヶ月の研修が終わり少年達と別れた。
 その後二度と会うことはないと思っていた。何故なら、飯島から少年達はこれからヨーロッパに派遣されると聞かされていたからだ。時とともに三人のことはすっかり忘れていた。
 しかし、偶然にも小野寺は三人の子供の一人と遭遇してしまったのだ。それは品川の高輪プリンスへ取引先の社長を訪ね、挨拶を終えての帰りだった。GPS研究会と看板に書かれた会場に近づいてゆくと、人がどっと会場から退出して来た。小野寺は足をとめ人混みを避けるために佇んでいた。
 ふと、会場の入り口に目を向けると、人々の流れに逆らって二人の男が立ち止まって話し込んでいる。こちらを向いている男の顔に見覚えがあった。何処かで会っているのだが、どうしてもそれが思い出せない。
 男は、もう一人の男に熱っぽく語っている様子だ。語りながら耳たぶを何度も引っ張っている。その時、その仕草で小野寺はあの時の少年の一人を思い出したのだ。神経質な質で緊張すると、いつもそうやって緊張をほぐしていた。
 心に描いた少年の頃の顔が、見る間にその男のそれとぴったりと重なった。ちょうど一回り大きくなっただけで、目鼻立ちはそのままだ。あの柏崎での出来事が一瞬にして脳裏に映し出され、礒の香りさえ甦った。

 小野寺は男の住所を突き止め、韓国情報部の岡山に密告した。小野寺は岡山が望む情報を流すだけで、仲間を売ることはしなかった。岡山もそれを強要しなかったのは、小野寺の情報源としての価値を認めていたからだ。
 それが何故仲間を売る気になったのだろうか。あの少年が成長し、日本人として生活しているという事実の裏に何があるのか知りたかったのか、或は和代の死に関わった男への復讐を遂げたかったのか、今でも分からない。
 小野寺と岡本は、電話を盗聴し、丸山亮が妻の実家に行くことを知って、その日、家に忍び込んだ。二人の注意を引いたのはパソコンだった。そして机の抽斗を開けるとMDがごっそり詰まっていた。
 岡本はパソコンのスイッチを入れた。12桁のパスワードを聞いてきた。最初、丸山や家族の生年月日を組み合わせて入れてみたが駄目だ。いろいろ試しているうちに、夢中になって注意を怠った。そして、予想もしない事態が起こった。
「貴様等、そこで何をやっている。」
背後で怒鳴り声が響いた。二人は飛びあがらんばかりに驚いた。丸山が新幹線に乗り遅れ、車を取りに家に戻ったのだ。しかし、岡本は訓練されたスパイだ。腰のナイフを引きぬくと、男に突
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