第二十一章
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り、そこに駐車した黒の大型のバンに高嶋が乗り込むところだ。車の内部がみえた。一瞬だが壁一面に通信機器が埋め込まれている。
高嶋が乗り込むとバンは走り出した。そして海岸通を左折した。榊原が携帯に怒鳴った。
「親父、黒の大型のバンだ。そっちに向かっている。」
携帯を耳にあてたまましばらくして言った。
「汚水処理場を右折したそうだ。」
しばらく走り、右のウインカーを点灯させた。榊原が叫んだ。
「おい、石田、小野寺がいるそうだ。おい、石田、その細い道を左折して待機しろ。小野寺が高嶋に何か言っている。手にした物を折ろうとしているらしい。はあー、はあー、はあー、何だそれは。親父、はーはー、なんて変な声を出さずに解説しろ。」
榊原が石田に向かって解説を続ける。
「なに、前の車から母親と子供が降ろされたって。つまり、小野寺はフロピーディスクを折ろうとしたんだ。そうして親子を解放させたんだな。よしよし、それでいい。」
「小野寺がバンに乗り込んで、二台の車が動き出したそうだ。前の車は黒のセドリック。親子はその場に残された。おい、親父、しばらくそこで待機しろ。すぐに後を追っては気付かれる。」
受話器から親父さんのガーガーという割れた声が響く。榊原が解説した。
「そんなことは分かっているって。そうでしょ、そうでしょ、分かりました。はい、はい。」
石田が携帯をリダイヤルする。韮沢捜査一課長が叫んだ。
「まだ開いていない。もうちょっと待ってくれ。」
「そのことじゃない。誘拐されていた親子が今開放された。場所は五色橋の近くの汚水処理場だ。すぐに保護してくれ。」
うっと絶句する声が聞こえた。
「小野寺親子が開放されたというのだな。分かった。ところで、高嶋方面本部長がそこにいたのか。」
「高嶋が乗ったバンがそこにいた。それで十分だろう。」
「だが……」
「兎に角、親子を大至急保護しろ。身の保身のことはそれから考えろ。」
今度は石田が携帯を切った。榊原が言った
「二台の車がこっちに向かっている。」
二人は車をUターンさせて二台の車を待った。黒のセドリックと黒のバンが目の前を通り過ぎる。二台は海岸通りを直進し港南大橋に向かった。石田もかなりの距離を置いて後についた。二台の車は倉庫街へと進んだ。そして突然右折して一つの倉庫に入っていった。
石田達はゆっくりと倉庫の前を通過する。二台の車は道路から20メートル奥まった倉庫の前に停車している。見ると、男二人が鉄の扉を開けているところだ。石田はその前を通り過ぎて、曲がり角を折れ、急停車した。二人は車から降り、倉庫を覗った。
タクシーが走ってくる。親父さんだ。榊原が手を上げ、タクシーが曲がり角を折れた。タクシー運転手は疲れ切った様子で、領収書を打ち出して
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