第二十章
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ても寝顔だけは昔のままの愛らしさを湛えていた。頬寄せたい衝動を押さえたものだ。今もその衝動をそっと心の奥に仕舞い込んだ。
これで晴美とのお別れとしよう。そして、彼等に、話すべきことを話してしまわなければならない。死を前にして初めて民族の壁を越えられそうな気がした。小野寺は振り返り、腰を落とした。
和代の話しは出きるだけ正直に話したが、和代が死ぬ前日、小野寺を誘ったことは話さなかった。互いに淡い恋心を抱いていたと語ったのだ。そして最後に、何も出来なかった自分の卑怯さをさらけ出し、石田に詫びた。石田がそれに答えた。
「いや、私だって拳銃を突きつけられたら何も出来なかったでしょう。それより、和代は夢見る少女だった。いつか現れるであろう恋人を夢見ていた。きっと最後に会えたんだ。和代は貴方の心の中にまだ生きていた。だからあなたの電話を使ったんだ。」
そういってまた涙ぐんだ。そして大きく息を吐き、きっぱりと言った。
「もう、分かりました。長年の心の靄がようやく晴れました。さあ、次に移りましょう。小野寺さん、例のブツの話しをして下さい。我々はここまで関わったのだから、知る権利があります。」
榊原と親父の目がぎらりと光った。
「分かりました、お話ししましょう。」
と言っって大きく息を吸った。皆、固唾を飲んで小野寺の言葉を待った。小野寺が口を開いた。
「皆さんはGPSをご存知でしょうか。」
石田が答えた。
「ええ、最新鋭の精密度誘導装置に使われているのがGPSでしょう。湾岸戦争の時のピンポイント爆撃で有名になった。」
「そうです。全地球測位システム、GPS衛星の信号で位置を計測し、10メートル以内の誤差でミサイルを標的に誘導する、それがGPSです。そして、あれは日本の最新鋭技術が用いられていることを知る人は少ない。」
「ほー」
榊原親子が同時に感心して驚きの声を上げた。
「北朝鮮にはミサイル技術はあるが、それを正確に標的に着弾させる技術はない。この情報は喉から手が出るほど欲しかった。」
三人が頷く。
「そして、彼等はある民間の研究所からそれを盗み出した。しかし、ようやく手に入れたその情報が彼等の手から零れ落ちて、人手に渡ってしまった。」
石田が聞いた。
「つまり、小野寺さんの手に渡ったということですか。」
「そうです。そして、彼等はそれを再び手に入れることになるのですが、その前にたまたま洋介君の手に渡った。つまり洋介君が盗んだCDにはGPSの情報が詰まっていたのです。」
「なんだって?」
すっとんきょな声をあげたのは榊原だった。
翌日、目覚ましの音で目覚めると、親父さんの姿はベッドにない。榊原があくびを噛み殺しながら言った。
「もう、朝か。4時間も寝ていない。今日は忙
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