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シンクロニシティ10
第十九章
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したから、もう日の目は見られん。ミイラになるしかない。ポリ公のミイラなんて見たくもねえがな。」
 こう言って声を出して笑った。石田に向けられた拳銃が上下に揺れた。一瞬の隙をついて、石田は左手で銃身とシリンダーを握った。男の顔が引きつった。石田が言った。
「こうしてシリンダーを握ると引き金が引けないってことを知っていたか。君はまたしても油断したってことだ。」
 男は必死で引き金を引こうとしている。しかし、シリンダーが回らず、従って引き金は動かない。石田は右手に握った警棒を振り下ろした。
 急ブレーキがかかる。車がスピンする。ブレーキ音が心臓に響く。運転していた男が腰の拳銃を抜こうとしてハンドルがぶれたのだ。車は回転しながらガードレールに衝突を繰り返した。石田は諦めて車の動きに体を委ねた。悲鳴をあげる晴美を抱きしめ、ソファーに伏せた。
 強い衝撃が襲った。晴美を抱きかかえながら、最初は前に、そして上に飛ばされた。衝撃は一瞬だったが、衝撃音はしばらく耳に残っていた。ガラス片が顔にへばりついている。前の方でうめくような声が響いた。
「やられた。奴にやられた。」
見ると、さっきの男が携帯で話している。息も絶え絶えで、血だらけで痛々しい。携帯を取り上げるが抵抗する気力も残っていない。手がだらりと落ちた。携帯を切って、晴美に声をかけた。
「大丈夫か、晴美。」
「ええ、大丈夫。仁がクッションになってくれたから。仁こそ大丈夫。」
「ああ、大丈夫だ。ちょっと頭痛がする。前の奴等は相当ダメージを受けている。」
床にオートマティックの銃が転がっている。食指が動いた。これも頂いておくことにした。
 左のドアは何度かガードレールと接触を繰り返すうちに吹き飛んでいる。二人はようやく這い出ると、石田は小野寺に電話を入れた。小野寺はすぐにでた。晴美が無事だというと、深い溜息を漏らした。そして言った。
「幸子にも知らせておく。」
 いで119番通報して救急車を呼び、榊原にも電話を入れる。
「おい、大丈夫か。心配していたんだぞ。だが、電話してよいものかどうか、ずっと迷っていたんだ。」
「ああ、大丈夫だ。すぐに迎いに来てくれ。晴美も無事だ。」
しばらく沈黙が続く。ほっとしているのだろう。
「良かった。本当に良かった。今何処だ。」
 100メートルほど先にコンビニが見える。塀にある住所表示を読んでコンビニの所在を伝えた。急に腹が鳴り、レストランを探すがそれらしき明かりはない。しかたなく、コンビニに入り、隅に備えられた小さなテーブルでカップ麺とお握りを食べた。
 救急車のサイレンが響く。ようやく到着したようだ。晴美はよほど眠たいらしく、石田によりかかりうとうとしていた。ところが、急にたちあがり、
「いけない、忘れてた、
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