第十九章
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警視庁と聞いて、石田はほっとした。池袋署は殺された坂本警部のいた古巣だ。例の裏切り者の警部がいるような気がして不安だった。警視庁であれば少しは安心できる。見張る目は多いほど良いに決まっている。
晴美は疲れているのだろう。しばらくすると石田の胸に顔を押し付けて寝入ってしまった。ふと思い付いて、携帯を取りだし榊原に連絡を入れた。榊原はすぐに出た。石田が言う。
「もしもし、俺だ。今パトカーで警視庁に向かっている。ちょうど飯田橋を過ぎたところだ。」
「おい、前にいるパトカー乗務員に気をつけろ。俺を銃撃したのは偽の制服警官だった。それに、坂本警部と瀬川警部補を殺した警部も現場にいた。石川警部と言う。そいつがお前達に近づかなかったか?」
「ああ、分かった。君もタクシーを飛ばして警視庁に来てくれ。」
そう答えると、携帯を切った。確かに、あの警部は石川と名乗った。助手席に座る警官が話しかけてきた。
「誰に電話したんです?」
「こいつの、お袋さんだ。心配して何日も寝てないんだ。ゆっくり眠れと言っても、今日は眠れんだろう。警視庁に呼んでおいた。」
「それはよかった。お嬢さん、すっかり安心して寝入っていますよ。よっぽどほっとしたんでしょう。」
警官は前を向いて頷いている。たいした演技力だ。石田は、ベルトに差した警棒を引き抜いた。皇居が見えてきた。道は合っている。内堀通を疾走する。もうすぐ桜田門だ。寝たふりをしながら視線を走らせる。
桜田門を通り過ぎた。石田は再び警棒を握り締める。桜田通りを疾走する。二人が寝入った思っているらしく、前の二人は気楽に考えているのだろう。しばらくして車は環状線に乗り、芝公園を左に見下ろした。
相当飛ばしているようだ。車はお台場線との分岐点で羽田線にはいった。そしてすぐに一般道に下りた。石田があくびをして、きょろきょろと車外を見た。大きな倉庫が林立している。
「ここはどの辺ですか。」
助手席の男がにやにやしながら振り返り、言葉を発した。
「目覚めてみれば、地獄の1丁目ってわけだ、石田。よく寝ていたな。」
「ここが地獄の1丁目だとは初耳だ。あそこに見えているのは品川火力発電所だろう。あれが地獄の猛火といいわけか。君もセンスがないねえ。」
男が顔色を変えた。右腕を動かし、リボルバーを突き出した。
「起きていたってことだ。まったく油断も隙もあったもんじゃねえ。あんたの顔を見てすぐに思い出したよ。中野ではちょっと油断して蹴りをくらった。しかも後までつけられた。しかし、今度は、そうは行かん。」
「俺も、最初に気付くべきだった。あそこに止めてあったパトカーは最初に駆け付けた臼井巡査と内田巡査部長のパトカーだ。彼等はどうした。」
「地下室に閉じ込めておいた。もっとも床の開閉装置を破壊
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