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シンクロニシティ10
第十九章
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り口がぽっかりと開いている。
「何だこれは。地下室じゃないか。」
 石川警部は自分でもわざとらしい演技だとは思ったが、しかたがない。中にはデブの松谷がいる。顔を合わせるのはまずい。まして、ここをうまく収めるよう飯島に指示されている。それをどう実行に移すかが問題だった。
 パトカーのサイレンの音が次第に近づいてくる。冷や汗が脇を濡らす。外にいる二人の偽警官が上手くやってくれることに期待するしかない。
「石川警部、自分が入ってみます。」
パトカー乗務員の臼井巡査と名乗った男が申し出た。やや小柄だが敏捷そうな男だ。石川が命令口調で言った。
「まず、中に声をかけてみろ。」
「はい。」
臼井は腰を屈めて、叫んだ。
「誰かいますか。どなたかいたら返事してください。こちらは池袋警察署の臼井巡査です。」
サイレンがまじかに迫った。どうやら二台目が到着したようだ。遅れれば遅れるほど面倒になる。石川は額の汗を拭う。中から声が響いた。
「二人います。一人は行方不明だった少女で、ここに監禁されていました。私はその父親です。」
「嘘だぞ、そいつは拳銃を持っている。」
松谷の声だ。臼井巡査が石川を振りかえり、困ったような顔で石川の指示を待つ。石川は考えを巡らせるが混乱した頭は真っ白なままだ。すると再び声がした。
「確かに銃を持っている。しかし、これは使っていない。監禁された娘を取り返すために持って来たんだ。それより、臼井巡査、貴方は本当に警官ですか。それを証明できますか。」
臼井はこれを聞いてはじかれたように笑いだした。そして笑いながら答えた。
「これは驚いた。パトカーに乗って、しかもこの制服を着ていて、本物かどうか疑われたのははじめてです。」
今度は少女の声だ。
「まずは顔を見せなさいよ。私は、何週間もここに監禁されていたの。人間不審になってもしょうがないでしょう。」
「お嬢さんがいるみたいですね。監禁されていたっていうのも本当らしい。いいでしょう。これから降ります。もう一人は内田巡査部長と言います。撃たないでくださいね。」
臼井巡査が階段を降り始めた。石川は思わずほくそえんだ。外にいる二人の偽警官であればこうも上手くことは運ばなかっただろう。臼井巡査の人柄が下の二人を安心させたのだ。もう少しだ。もう少し、時間があれば飯島の命令に応えることが出きる。

 先ほど電話を入れて緊急事態を伝えると、飯島は石川に指示を与え、最後に、こう付け加えた。
「俺は次の事態に備える。絶対にうまくやれ。」
そう言って、飯島は電話を切った。次の事態に備えるとはどういう意味なのか、石川には理解できなかった。とはいえ、飯島の指示は地下室を誰にも知られずに密閉し、晴美を確保することだ。パトカー乗務員の臼井と内田は葬りさ
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