第十七章
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「何故、その男は洋介君を知っていたんだ?しかも、洋介君が殺されただと。いったいどういうことなんだ。」
石田の説明を聞いて、親父が叫ぶ。榊原が考え込んでいたが、吐き出すような一言を発した。
「うるせえんだよ、親父。ちょっと黙っててくれよ。頭を整理してんだから。」
石田が口を開いた。
「恐らく、あの男は小野寺だ。幸子の旦那の小野寺に違いない。きっとそうだ。あの男は晴美と呼び捨てにした。ごく自然にだ。晴海は父親が自分を嫌っていたと言ったが、違う。俺も最初に会った時、晴美に見出したのは、和代の面影だ。目元がそっくりだった。薄茶色の瞳もよく似ていた。小野寺は、それに耐えられなかったんだ。」
親父が口を開いた。
「そうかもしれん。小野寺は、20年前、和代さんを助けようとしたが、それが出来なかったと言ったんだろう。小野寺の心にあるのは、人間としての良心の疼きだ。」
「ええ、和代が電話するとしたら、晴美を愛している人で、助けだせる可能性のある人だ。和代は小野寺の良心に訴えたんだ。」
それまで黙っていた榊原が叫んだ。
「分かったぞ、てっことは、小野寺がモンスターなんだ。小野寺だからこそ晴美の恋人、洋介君の携帯の番号だって知っていたんだ。」
榊原は和代が石田に電話してきたという事実を既に認めているようだ。霊的な話を常に避けてきた榊原にしては珍しい。石田は、微笑みながら言った。
「そうだ、その通りだ。榊原、お前の疑問が漸く解けたようだな。いくら探偵でも洋介君の携帯番号を調べるなんて出来っこない。」
「そうだ、小野寺は、一度、洋介君の危機を救っている。アパートの部屋に戻るなと警告しているんだからな。それに拉致した組織のことも知っている。そうでなければ、助ける算段なんてあるわけない。しかし、小野寺はその組織とどういう関係なんだろう。」
二人のやり取りを聞いていた親父が重々しく頷きながら口を開いた。
「小野寺は、晴美さんや洋介君を拉致した男達と同じ世界の人間だ。闇の世界で生きてきたんだ。恐らく、その組織の人間だろう。だから洋介君は拉致された。洋介君が裏切り者であるモンスターの声を知っていたからだ。」
二人が親父の顔を見た。榊原がうめくように言った。
「そうか、洋介君はモンスターの正体を割り出すために拉致されたのか。しかし、裏切り者を探すという目的のためだけで誘拐という犯罪を引き起こすなんて考えられんが。」
「スパイの世界とはそういうものだ。だからこそ、小野寺は相手の怖さを知っていた。知っているからこそ、死を覚悟せざるを得ない。お前は刑事畑しか知らない。ワシは公安も知っている。スパイの世界は冷酷だ。つまらぬ利害の不一致が死をもたらす。」
榊原がすっとんきょな声をあげた。
「スパイだって、なんてこと言い出
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