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シンクロニシティ10
第十七章
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転しろ。」
運転手は漸く納得したらしく、
「奴は何をしたんです。おっと山手通を右折しましたぜ。」
などといって右折車線に入ろうとして、横から割り込もうとした車をクラクションを鳴らして蹴散らした。信号が変わり、ようやく右折すると既に男の乗ったタクシーは何台もの車が間に入っているが、見失うほどではない。
「ちょっと追い越しをかけてみましょうか。」
「いや、大丈夫だろう。そうだ、連絡をしておかなければいかん。」
この手柄を高嶋方面本部長に知らせておかなければならない。高嶋の携帯に電話をいれた。
 ちらちらと運転手がバックミラーで様子を窺う。高嶋が出た。犬山は運転手に聞こえるように大声で言った。
「犬山です。例の、尾久の男達の一人を追跡中です。もしかしたら奴らのアジトが分かるかもしれません。」
「本当か、そいつはよくやった。くれぐれも注意しろ。拳銃は持っているのか。」
「いえ、拳銃は携帯していません。大丈夫です。アジトさえ確かめられれば応援を頼みますから。」
運転手が叫んだ。
「旦那、奴が要町の交差点で降りますぜ。」
「奴がタクシーを降りました。こちらもタクシーをすてて追跡します。また連絡します。」
「分かった。成果を期待してるぞ。榊原警部補の無実を証明できるかもしれん。私は待機して、連絡を待つ。」
 千円札を握らせ、タクシーを降りると全速力で駆け出した。男が路地に消えたからだ。路地まで駆けつけ見ると、男が携帯を耳に当てながら左に折れるところだ。犬山はゆっくりと曲がり角まで近付いた。塀の横から顔を覗かせると、男は倉庫のような建物の敷地に入ってゆく。しばらく息を殺して待った。十秒数えて建物前まで移動した。
 コンクリート三階建ての建物がそこにあった。二階三階の窓は全て閉ざされている。左手にアルミニウムのドアが半開きになっている。そこから男は中に入ったに違いない。しかし、これ以上近づくのは危険だ。応援を頼むことにした。
 その時、いきなり太い腕が首に巻き付き、こめかみに冷たい金属が当てられた。拳銃だった。振り解こうとするがなまじっかの力ではない。男の強い息がうなじにかかる。相手も必死である。押し殺したような声が響いた。
「薄汚い犬が。俺達を甘く見やがって。生きて帰れると思うなよ。」
 犬山は一瞬にして力が抜けた。坂本警部、瀬川巡査部長の顔が思い浮かんだ。後悔の念が渦巻き、あの場所でこの男と出会ってしまった運命を呪った。がくがくと膝が鳴った。体の震えが止まらない。男の言う通り、生きては帰れないと悟った。
 そのままの姿勢で階段をあがっていった。男が回した腕をほどき、拳銃を向けたまま、鉄製の扉を開く。男は何が可笑しいのか鼻で笑っている。
「さあ、中に入るんだ。」
 ドアノブを握ったまま銃
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