第十七章
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みると、禿げの大男のゲジゲジ眉は真っ白だった。相好を崩した顔は、最初に出迎えた時の険しい印象とはうって変わって人の良い老爺のものだ。小野寺はゆっくりと車に入っていった。
榊原と名乗った男のことは知っていた。幸子の家の電話を盗聴していたからだ。一人の女性を巡る不思議な人間関係がそこに出現した。幸子に対する苦い思い、榊原に対する嫉妬、石田に対する後ろめたさ。
榊原は、学生時代から幸子と晴美を良く知っているらしく、石田同様、晴美を救い出したいという意欲に燃えている。しかし、幸子のことに触れるたびに妙に視線が揺れる。小野寺とまともに目を合わそうとしない。苦い思いを噛み殺した。
榊原は元刑事だと言った。元と言うのは、いろいろ事情があってと口を濁していたが、禿の親父が口を挟んだ。
「あんたは新聞を読んでいないのか。同僚二人を撃ち殺して逃げている刑事がいるだろう。あれがこいつだ。」
榊原は顔を真っ赤にして親父を怒鳴った。
「親父、いい加減にしろよ。そんなこと話してどうする。」
榊原は小野寺に向直って、言い訳した。
「小野寺さん、確かにワシは警察に追われている。だけど聞いてくれ。あれは嵌められたんだ。二人を撃った奴は他にいる。そいつがワシの拳銃を持ち出した。」
小野寺が遮った。
「榊原さん、その話も詳しく話してくれませんか。と言うより、これまでのことを全部聞かせて下さい。」
親父のだみ声が響いた。
「そうだ、お互いに知っていることを話すとしよう。」
狭い空間に男四人が車座に移動し、額を寄せ合った。
執拗な質問を繰り返す榊原とその親父はさすがに刑事だけのことはある。うんざりさせられたが、自分が小野寺であることと、ダブルスパイだということだけは認め、組織の実態については口をつぐんで秘密を守ることにした。
晴美に関することは全て話した。そして、今、置かれている状況、組織との接触の方法、用意できる武器、要するに晴美を救い出すための話だけに絞った。石田はしつこく死んだ妹のことを尋ねてきたが、今はそれどころではないと突っぱねた。
しかし、いずれ話すと約束せざるを得なかった。それがあの少女の最後を見送った人間の最低限の責務だろう。小野寺の態度は三人にとっては不満のようだったが、それはしかたのないことなのだ。小野寺はあくまでも反日で動いてきた人間だし、日本人が大嫌いなのだから。
話し合いの内容は、今に至る両者の状況を付き合せ、突破口を見出すことだ。そして曙光が見え始めたのは、話し始めて7時間ほどたった頃だ。みなそのアイディアに飛び付いた。そして作戦が練られたのだ。
小野寺が電話を掛けたのは一晩あけた翌日の昼過ぎである。相手は、叔父が電話するよう指示していた本部の幹部だ。彼はすぐに出た。駒込の
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