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シンクロニシティ10
第十七章
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すんだ、親父。ヤクザの世界だよ。スパイなんかじゃない。北朝鮮ルートのヤクがらみの事件だ。」
「いや、これは公安事件だ。確かにヤクザやヤクが絡んでるのも事実だ。しかし、もっと冷酷な感じがするし、組織だっている。簡単に考えるのは危ない。小野寺は、恐らくその世界を知っているんだ。最初からそんな匂いがしていた。石田君、覚悟を決めよう。」
「ええ、はなからそのつもりです。」
「よし、やろう。ワシも燃えてきた。死に場所が見つかった。おい、成人。弱虫、成人。お前はどうなんだ。」
「馬鹿にするな、俺だって警官だ。その覚悟なくして警官になったりはしない。」
「よし、明日の13時。小野寺から電話がかかってくるのを待とう。」
石田が、ふと思い付いて榊原に聞いた。
「しかし、モンスターと洋介君のやり取りを知っているのは限られている。その組織に情報を漏らしたのは誰なんだろう。」
「そう、知っているのはごく限られている。まず、死んだ二人、瀬川と坂本。だが、彼等から情報が漏れたとは考えられない。そして、高嶋本面部長と、その指示で例のCDの中身を調べた公安課長、そして製薬会社を調べている捜査二課長。この三人だ。公安課長は、警察庁のキャリア、捜査二課長は警視庁の生え抜きだ。」
親父が口を挟んだ。
「その三人とは限らんだろう。課長だって自分で捜査するわけじゃない。部下を動かす。その三人以外にも何人かに伝わったはずだ。お前が顔の確認を怠った警部にもだ。」
榊原はぷーっと膨れて、何か反論しようとしたが、大きく息を吐いて押し黙った。
 しばらくして、榊原は、ふと何かを思い出し、携帯のボタンを押した。相手はすぐに出たようだ。
「もしもし、犬山か。その後どうなんだ。」
「連絡をお待ちしてました。例の件、高嶋方面本部長に相談して、秘密裏に金庫の指紋を採取しました。そのなかに、ゴム手袋のものと思われる指紋がありました。私も高嶋方面部長も、それがその警部のものだろうと。」
「敵もさるもの、と言うわけだ。」
「ええ、それより、高嶋方面部長に連絡なさったらいかがですか。きっと力になって下さると思います。高嶋方面部長も、連絡がないのを不思議がっていました。」
「ああ、分かっている。いずれそうするつもりだ。」
 榊原も何度か電話したいという誘惑にかられた。しかし、父親の言葉に真実があるような気がしたのだ。父親はこう言った。
「お前とそのキャリアが親しいことばれているなら、そのキャリアの電話は盗聴されている。それはそのキャリアも納得ずくだ。キャリアってのは上の命令に逆らうことはない。いいか、頼るのは最後の最後だ。盗聴されてもかまわんというせっぱ詰まった時だ。」

 ここはホテルの一室である。小野寺は着信履歴に残された番号を見ながら、もう一
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