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シンクロニシティ10
第十六章
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けたりしません。その声は、私の記憶にしかない声だったのっです。」
「………」
「それは20年前に柏崎で殺された、妹、和代の声だったのです。あなたは、」
突然電話が切れた。
「もしもし、もしもし」
石田の叫びに答える者はいない。何度かリダイアルしてみたがすでに電源が切られている。
 親子は呆然と石田を見詰めていた。二人とも同じように口をあんぐりと開け放ったままだ。息子の唇にかろうじて貼り付いていた煙草がぽとりと落ちた。しばらくして、親父さんの方が「あちちち、あちちち」と声を発し、屈み込みながら、足元の煙草を拾い上げた。それを口に咥えて言った。
「今言ったことは、それは…本当のことなのか?」
「ええ、本当です。晴美の声ではありません。妹の声だったんです。聞き間違いではありません。」
榊原はまだ口を閉じようとはしない。目は驚きと恐怖に囚われたままだ。親父の方はすぐさま現実を見詰め始めていた。暫くの沈黙の後、唐突に口を開いた。
「相手は、最初のうち、話を聞く態度を示していた。切らなかったんだからな。それが妹さんのことに触れた途端電話を切った。ってことは妹さんのゆかりの人、妹さんの死に関わりのある人ってことだ。つまり妹さんはその人に助けを求めた。」
「ええ、そう思いました。ですから直接電話してみたんです。もしかしたら、晴美のことを、つまり居場所を知っている人かもしれない。」
榊原がごくりと生唾を飲み込み、話に加わった。
「二人ともどうかしているんじゃないか。妹さんは死んでいるんだ。死んだ人間が電話できるはずがない。石田は晴美さんを思うあまり、幻聴を聞いたんだ、そうだ、それならありうる。」
親父さんがそれに答えた。
「馬鹿か、お前は。現にこうしてコンピューターに記録されてる。日付つきでな。石田さん、この日付は、つまり?」
「ええ、和代が殺された日です。」
「ってことは間違い無く妹さんが石田君に掛けてきたってことだ。」
榊原が大きく首を横に振って叫んだ。
「そんなこと考えられん。二人ともどうかしたんじゃないのか。ワシは信じない。そんな馬鹿な話は信じないからな。何かしら科学的に説明のゆく理由があるはずだ。」
哀れむような視線を息子に向け、親父さんが言った。
「ワシは人の死を何度もまじかに見てきた。その経験から言えることは、世の中には説明のつかない不思議に満ちているってことだ。もしかしたら死ってのは終わりではないのかもしれないと思うことが何度もあった。」
親父さんは、ふと、顔をあげて息子を見た。
「そういうお前は、そんな風に感じたことはないのか。不思議な出来事に遭遇したことはないのか。」
「ある訳はない。ワシはいつだって正常な世界の人間だ。」
「そうだった、お前は死んだお袋似だ
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