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シンクロニシティ10
第十六章
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する組織が存在する。」
「ってことは、晴美がとっさに手にした携帯電話は誰の物なのか分からないってことですか?」
「そうだ、誰のものか全く分からない。」
 石田は押し黙った。そうであれば、親父さんが調べたナンバーに電話を掛けてみるしかない。和代は、そのナンバーから石田の携帯電話に掛けたきたのだ。親父さんも同じことを考えていたようだ。
「つまり、このナンバーに掛けてみるのが一番手っ取り早い。電電公社の野郎もこれ以上の協力は警察からの正式な要請がなければ出来んと言っている。しかし、これには危険が伴う。何故なら晴美さんが掛けた携帯は、晴海さんを誘拐した奴等の持ち物とも考えられるからだ。」
 石田はそうは思わなかった。和代がその携帯を選んだのだのには訳があるはずなのだ。和代は晴美を救いたかった。だとすれば晴美を危険に陥れるような真似はしない。何かしら和代に縁のある人物の携帯であるか、或はこの番号に連絡しろという意味なのかもしれない。石田は決心した。
「その番号に電話してみましょう。どちらにしろ晴美の危険に変わりがないような気がする。」
「おい、石田、それはまだ早い。その番号の動きを探るように、電電公社じゃなくてNTTの親父の知り合いに掛け合うことも出来る。」
「いや、時間がない。」
こう言うと、あっけにとられる二人を尻目に、石田は携帯を取り上げ、番号を素早くなぞると、耳に当てた。
「おい、待て、万が一ってこともある。やめろ、おい、石田。」
榊原の声を石田は無視した。親子は呆然と見ていただけだ。
呼び出し音が響く。ルルルル、ルルルル、呼び出してはいるがなかなかでない。胸が締めつけられるような緊張を覚えながら、石田は待った。20回を越えて漸く呼び出し音が途切れ、相手が出た。沈黙が流れた。石田がごくりと生唾を飲み込み漸く声を発した。
「もしもし、もしもし、電話を切らずに聞いてください。私は怪しい人間ではありません。名前は石田仁と申します。何故、あなたの番号に電話を掛けたのか、理由を言います。少し驚くような内容ですが、これは真実です。」
二人も緊張して石田を見詰めている。相手が電話を切らずに聞く意思があることを感じて、石田は一呼吸してゆっくりと続けた。
「実を申しますと、私の娘が、娘と申しましても前妻の娘なのですが、事件に巻き込まれました。誘拐されたのです。そして7月18日。私の携帯に一本の電話がありました。助けを呼ぶ電話です。その電話はあなたの携帯から掛かってきたのです。」
「………」
「電話は、助けを求める女性の声でした。ですが、その声は、失踪した娘の声ではありません。私は何度も娘に会いその声を知っていますし、記憶に残っております。でも、娘の声ではなかったのです。もし、娘の声であれば、私はこの電話番号に掛
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