第十五章
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すぐに反応したのは親父の方だ。
「よし、それは俺が引きうけよう。何とかなるはずだ。石田君の携帯の番号を後で教えてくれ。よし、今日も出かけるぞ。都内で泊まりだ。そうだ、成人、明日の夕方は都内の健康ランドに移動しとけ、いいな。場所は着いたら電話をくれればいい。」
「親父、また健康ランドかよ。こういう所は、警察が真っ先に手配書を回す。だから俺は正面から中には入れない。露天風呂に忍び込むのも大変なんだ。いっそのこと観光地のホテルに泊まった方が安全じゃないかな。」
「駄目だ。お前は警官殺しで追われている。奴等も必死だ。泊まるならここが一番安全なんだ。そうだ、お前は例の二課の犬山を捕まえに行くって言っていたな。だったら車の移動は石田君にまかせよう。どうだ石田君。」
「ええ、大丈夫です。江東区にいい健康ランドがあります。名前は忘れましたが。着いたらお二人に連絡します。」
石田は本当のことを言えなかった。死んだ妹が電話を掛けてきたなどと言えば、狂人扱いされてしまう。常識人であればあるほど世の不思議を無視するか、遠ざけようとする。理解の範囲以内で理性を働かせようとする。
しかし、この世には理性で割り切れない事柄がいくらでもあるのだ。科学信奉者は科学的に説明出来ない事柄を退ける。それはこの世のありとあらゆる事象を現代科学が到達しえた知識内に縛ろうとするものだ。
現代科学は百年前に比べれば飛躍的な進歩を遂げたかもしれないが、千年後の未来の人類にとって、現代科学は我々が中世のそれを連想する程度の貧弱な科学に過ぎないのだ。いずれ霊的な分野にも、科学のメスが入れられ、その全貌とまではいかないまでも、その周辺が解明される日が来るはずである。
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