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シンクロニシティ10
第十五章
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の午後7時、いいな。」

 彼等は都内に恐らく20箇所以上の秘密の隠れ家を持っている。7番とは葛飾区のマンションのことだ。何度か使ったことがある。小野寺は部屋のスイッチを切り、窓から階下を見た。怪しい影は見えない。だが、安心は出来ないのだ。
「そうそう、言い忘れていたが、洋介君は既に殺されたようだ。逃げ出そうとしてところをナイフで刺されたらしい。馬鹿な真似をしたものだ。兎に角、会おう。娘さんを助け出す算段をするのか、それとも高飛びするか、お前次第だ。手は貸す。」
これが岡山との最後の会話になった。

 小野寺は7番のマンションで岡山の死体と遭遇することになった。惨たらしい死に様だった。小野寺はここでも吐いた。しかし、死体はまだ温かい。唇を拭うと拳銃を構えた。殺し屋がまだ潜んでいる気がしたのだ。恐怖は頂点に達した。
 マンションの構造はよく知っていた。隠れる場所はそう多くははい。小野寺はバスルームに4発、クローゼットに4発、それぞれのドアに撃ち込んで、素早くカートリッジを入れ替えた。銃声など気にならなかった。恐怖が先だった。
 銃を構えながらクローゼットのドアを開くが誰も居ない。恐る恐るバスルームに向かうと、見知らぬ男の死体が転がっていた。撃つ順番が逆だったら死んだのは小野寺の方だ。じっとりと冷や汗が額を伝う。近所が騒ぎ出す気配がした。警察には既に通報されているだろう。小野寺は部屋から逃げ出した。

 洋介は、モンスターの正体を特定すために拉致されたのだ。モニターされた組織の人間達の声からモンスターを割り出すためだ。モンスターの声を知っているのは洋介だけだったからだ。モンスターとは小野寺のことだ。二重スパイが露見したのだ。
 いや、もしかしたら、あれもばれているのか?いや、そんなことはない。あれを持っていることを知っているのは、俺だけなのだから。これは最後の、本当に逃げ道がなくなったときの切り札だ。いや、上手く行けば金を手にすることも出来るかもしれない。
 危なくなったらヨーロッパに高飛びするつもりだった。パスポートも用意していた。しかし、まさか晴美を人質にとるとは思いもしなかった。生き延びるには晴美を見捨てるしかないのか。死の恐怖が小野寺の心を支配しており、思考はぐるぐると空回りをしている。
 しかし、高飛びするとしても既に遅いのかもしれない。恐らく空港と言う空港に網が張られているはずだ。どこからともなく沸いてくるスパイ。まさにスパイ天国の国。各国のスパイが好き勝手に暗躍している。それを取締る法律さえない。

 会社で営業として二年前に採用した安部は本部から派遣された本格的なスパイだった。本部といってもはっきりとした輪郭をもった存在ではない。小野寺のような生え抜きの在日朝鮮人スパイでも、突如としてもたらされ
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