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シンクロニシティ10
第十五章
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んが二人もいたな。特に上のお嬢さんの行動は目に余る。見ていてひやひやするよ。」
ひやりとする感覚と同時に、かっと血が頭に登った。
「それはどういう意味です。」
「別に。」
思わず男の胸倉を掴んだが動じる気配はない。にやにやして答えた。
「最近、お嬢さんに彼氏ができただろう。ノボルっていう奴だ。あれは俺の命令は何でも聞く。お嬢さんをバイクから蹴落とすぐらい平気だ。」
小野寺は呆然と男の薄い唇の動きを見ていた。戦慄が体を震わせた。思わず手を離した。
男は、二人を心配そうに見詰めるお上に、何もなかったように声を掛けた。
「お上さん、お勘定。」

 これがダブルスパイになる最初のきっかけだった。小野寺は、その夜、男の最後の言葉が脳裏に蘇り一睡も出来なかった。翌日も店に顔を出した。今度こそ守り切ってみせる。晴美を守り切る。そう決意していた。
 果して、男は奥の小上がりのテーブルでにこにこして手招きしていた。しかし男の目は笑ってなんかいない。かくかくと震える脚を一歩前に踏み出したのだ。

 エアーコンディショナーは鋭い冷気を送ってくる。上半身裸だが、体はアルコールでほてっている。しかし、時として恐怖が背筋を走って寒気を催した。ぶるぶると震えて膝を抱え込んだ。あの男、韓国のエージェントの岡山も殺された。
 洋介の失踪は知っていた。晴海の携帯を盗聴していたからだ。すぐさま岡山に相談した。すると岡山は金を要求してきた。洋介の情報を得るため、北のスパイと分かっている男を一人潰すのだからそれを金で保証しろと言う。
 つまり、泳がせれば情報はいくらでも取れる。それを捕らえて口を割るらせ、万が一殺すこともあり得る。その損失を金で購えというのだ。まさに正論だった。岡山から電話が入ったのは支払いを済ませてから一週間後だ。

「どうする、お前も見に来るか。まあ、無理にとは言わん。あの時みたいにゲロ吐かれても堪らんからな。しかし、モンスターとは大きく出たな。しかし、二重スパイらしい偽名だ、誉めてやるよ。」
小野寺は全てを飲み込んだ。潰された男は自分と洋介とのやり取りを何もかも知っていたと言う。岡山は続けた。
「しかし事態は、お前さんの想像を超えている。仲間の情報では、お前さんの娘さんが拉致された。ってことは、つまりお前が二重スパイだってことはばれているってことだ。つい昨日のことだ。残念ながら、俺の仲間は娘さんが乗せられた車を追跡したが撒かれた。お前も見張られていることは確かだ。」
「晴美が、さらわれた。まさか、そんな。」
小野寺は、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けて絶句した。電話の声は続く。
「娘さんのことより自分の心配をしろ。そのマンションから夜中に抜け出せ。絶対に見つかるなよ。落ち合うのは7番だ。明日
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