第十四章
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イレブンが見えた。心臓が破れそうだったが、必死で走った。そこに公衆電話があるはずだ。そこから電話すれば大丈夫だろう。
女房の声が受話器を通して聞こえたのは、呼び出し音を数えて12回目の時だ。
「おい、子供を連れてそこを出ろ。いいか、男達がそちらに向かった。」
「男達って誰なの。あなたいったい何を言っているの。」
「今は何も言えない。俺自身がこれからどうなるのかも分からない。事件に巻き込まれた。これからそちらに男達が向かう。俺を捕まえるためだ。お前や子供に危害が加わるかもしれない。兎に角そこを出るんだ。」
「分かったわ、あなた。すぐに出る。」
「いいか、よく聞け。俺は犯罪者になるかもしれない。だけど、俺は何もしていない。俺の無実を信じていてくれ。」
「それってどういうこと。あなた、もう少し詳しく話して。」
「今はその暇はない。とにかくそこを出ろ。いいか出るんだ。」
「分かった。あなたの携帯にいずれ電話する。いい、それでいいでしょう。」
「待て、携帯は盗聴されてる可能性がある。兎に角、心配するな、しばらく実家に帰っていろ、いいな。」
電話が済むと、今度は110番通報して殺人のあったこと、そしてその死体の所在、犯人達が3台の車で高速に乗って東京に向かったことを告げて電話を切った。そして、憂鬱な思いで、もう一度、携帯のボタンを押した。背に腹は変えられなかったのだ
それからおよそ5時間後、時ならぬ警察官殺人事件にざわめく館山警察署に一本の電話が寄せられた。
「名前だって、冗談じゃねえよ、厭だよ、言いたかねえ。何だったらこのまま切ってもいいんだぜ。どうする。…そうそう、最初からそう言えばいいんだ。いいか、俺は見たんだ。男が倉庫から出てくるのを。乗ってきた車はそこに置いたまま、泡食って駆けていった。あそこから東に行ったところに雑木林があっただろう。そうだ。倉庫から50メートルのところだ。奴は、あそこに何かを投げ捨てた。恐らく凶器じゃねえかな。俺はちょうどそのそばで車を止めて横になってたんだ。さあ、国民としての義務は果たしたからな。せいぜい頑張って犯人をつかまえろよ。それじゃな。」
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