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シンクロニシティ10
第十四章
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んでいた。
 次第に、ぴたりと口をつぐむ上村兄弟に睨みをきかせる飯島という構図が浮かび上がった。僅かな気配でしかない。飯島の兄弟に対する態度は慇懃であるるが、無礼というわけでもない。しかし、確かに組内の雰囲気に微かな変化が立ち上りはじめた。
 坂本はその微妙な変化の裏を探ろうとしていた。隠された真実があると踏んで、飯島を張った。その飯島が出口付近になると俄にスピードをあげたのが館山なのだ。石田を襲った男達は飯島に繋がる可能性があるということだ。

 榊原は思考を巡らせた。石田が襲われた理由はDVD、MD、両方の可能性がある。では、洋介君と晴美の失踪はどういうことなのか。MDの内容は素人が解読できるものではない。まして、それは盗まれた薬品の製造過程と実験結果の文字の羅列に過ぎない。それが何故、何人もの人間を巻き込んだ、複雑な事件に発展するのか。
 ここまでくると、もはや推理の糸はぷっつりと切れてしまう。材料が少な過ぎる。坂本が言うように、麻薬がすべての共通項ということも考えられるが、どこをどう結び付ければ、石田や晴美、そして洋介君の件と繋がるのかさっぱり浮かんでこないのだった。
 瀬川に電話を入れたが通話中で繋がらない。坂本とやりとりしているのかもしれない。車は軋みをあげて疾走している。車体はボロボロだが、エンジンはまだまだ使える。瀬川に遅れること30分、ようやく湾岸線に乗った。

 そこは海岸沿いに建ち並ぶ倉庫の中だった。積み上げられた麻袋に何が入ってのか分からない。入り口は閉じられており、薄暗い電灯が一角を照らし出している。そこで数人の男達が何やら話している。
 一人の男が椅子に座り、両手で顔を覆っている。その後ろには屈強そうな二人の男が銃を構えて立ち、椅子の前にいる太った大柄な男が、拳銃を差し出し男に受け取るように促している。この太った男は例の探偵、猿渡であり、椅子の男は石川警部である。
 猿渡は肥えた腹を突き出し、よく響く声を張り上げた。
「いい加減に腹をくくれ。もう逃げられないんだ。こうして榊原の拳銃を持ってのこのこやって来たんじゃねえか。既に手を汚している。もし言う通りやらなければ自分が殺されるんだ。貴様はどっちを選ぶ?」
 石川警部は両手を顔から引き離し、すがるような視線を向けた。
「頼む、猿渡さん、何とか見逃してくれ。これからだってどんなことでもやる。君等の言うことは何でも聞く。だからそれだけは勘弁してくれ。仲間を撃つなんて出来るわけがない。」
「ふざけるな。俺達の世界は証人を生かして返すほど甘い世界じゃねえ。お前は殺人者になるか死人になるかのどっちかなんだよ。お前は刑事だろう。危険な世界と隣り合わせで生きて来た。そうだろう?その覚悟があってこの世界にはいったんだろうが。」
泣き声が返って
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