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シンクロニシティ10
第十三章
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せば、弁護士資格剥奪だからな、喋る恐れはない。そっちの方はどうなんだ。」
「大丈夫、上村に洩れることはない、保証する。」
「ところで、もう一人のDVDを預かっている男の情報は、あんたが掴みかけているという上村の犯罪の情報と交換というわけにはいかないか?」
「榊原さんも、なかなか、商売上手だ。いいだろう、教えてやろう。ところで、榊原さん、上村の犯罪は何だと思う?」
と言って、にやりと笑った。暫くの沈黙の後、榊原が答えた。
「ヤクだろう。」
坂本は、緩んだ頬を硬直させ、憮然として頷いた。上村のヤク嫌いは有名な話だ。榊原が上村の犯罪がヤクであると指摘したのは、麻取が動いていることが頭に引っかかっていたからだが、やはり正解だった。坂本が口を開いた。
「ヘロインと覚せい剤。しかも純度が恐ろしく高い。」
ずばり当てられてうろたえ気味であったが、坂本も気をとり直して続けた。
「出所は北朝鮮。この情報を得るのに苦労したよ。俺自身が中毒になっちまった。毒食わば皿までってことだ。」
榊原は、坂本を睨んだまま押し黙った。坂本が上村と刺し違える覚悟であることはその暗い目を通して伝わってくる。上村の弟の主張を覆すために自ら覚せい剤に手を出したのだと言う。その噂が業界に広まるにつれ、上村組長の弟、正敏が心を許した。
「てことは、渋川のOL失踪事件、入院ホステス自殺事件の立証が出来るということだ。俺は継続事件としてそいつを追っていた。まずは、それに決着をつけようじゃないか。」
「榊原さん、俺も最初はそれが目的だった。だから、組長の弟がぼろぼろになった俺を哀れんで最高級品を手渡してくれた時は内心小躍りして喜んだ。だけど、だんだん欲が出てきた。奴はボロも出さずに商売をやっている。不思議に思わないか?」
「ああ、不思議だ。どんな裏があるか、つい探りたくなったというわけだな。よし、俺の情報を少し流すが、上村組に麻取りが動いている。」
「ふふふ、その情報を麻取に流したのは俺だ。内部に食い込んだ俺でさえなかなか核心に迫れない。だから、匿名でサンプルを添えて情報を流した。外が騒がしくなれば内側も騒ぎ出す。」
「なるほど、上手い手だ。それで、内側は?」
二人の含み笑いが低く響く。そこには、互いの腹の探り合いに終止符を打つ頃合だという含みが込められていた。
 しかし、容易ならざる事態が事件を包んでいることに、榊原は改めて思い知らされた。DVDをめぐる上村の動き、北朝鮮ルートの覚せい剤、スパイ活動を想起させるMDの事件、漆黒の闇のなかに不気味に何かが横たわっている。
 榊原は坂本にすべてを打ち明けようと決心した。洋介や晴美の失踪から、麻取の動き、石田襲撃まで、全てを話すことにしたのである。榊原は、事件の底に蠢く得体の知れないに物に恐怖を
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