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シンクロニシティ10
第十三章
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してきたから、奥さんともご長男とも親しい。確かに奥さんは最後まで真実を隠そうとした。」
「では、奥さんではなくご長男が、自殺をほのめかせたんだな。」
「あの無念そうなお顔を拝見して、私は、まさか自殺では…と問いただした。息子さんは目をつぶって首を縦に振った。僅かな動きだった。」
「ご長男さんは、自殺だと言ったわけではない?」
「言わなかったが、頷いた。それで十分だ。」
「……」
「私はねえ、榊原さん、人に何と言われようと気にしない。汚職警官とよばれようとね。私は汚濁にまみれながら上村組を徹底的に洗っている。そして上村の犯罪の証拠も掴みかけている。」
「上村の犯罪だって?二つの殺人以外のか?」
「ああ、でも、今は手のうちを明かしたくない。あんたも分かるだろう、刑事なら。」
「勿論だ、だが、坂本警部、あなたはそれを告発出来るんかい?OL失踪事件も上村の情婦殺害事件もみんなあんたが、もみ消したんじゃないか。」
そう言われて坂本は押し黙った。榊原が静かに言った。
「俺は奥多摩の石井巡査部長に会って来た。」
顔を上げた坂本の顔にふと優しげな微笑が浮かんだ。
「奴はどうしてた。今でもあそこにいるのか?」
元部下が何か秘密を漏らしたかもしれないという疑念も恐れもその顔にはなかった。ただ懐かしそうに目を細めているだけだ。
「石井君は警視庁を去った。もうとっくの昔だ。」
「そうか、辞めたか。それはそれで良いのかもしれない。奴はこの世界には不向きだった。正義感が強すぎたんだ。腐った組織に見切りをつけたんだろう。」
「しかし、そのあんたは、その腐った組織からはみ出して、更に腐って汚れ切っている。そう思われている。まあ、石井君はそんなことは一言も言わなかった。あんたを信頼しきっていたよ。」
「俺は石井君にだけは真意を伝えた。何としても磯田副署長の汚点を世間に晒さないことだ。そのために、上村に接近した。上村に気付かれずにDVDを回収する。そして一気に片を付ける。」
「しかし、DVDはいくらでも複写可能だ。」
「いや、奴は吝嗇だ。金の成る木をそう易々と他人には渡さん。マザーテープは一つ。あの5階の金庫の中だ。これをコピーしている。渡す相手も限られているはずだ。」
「その通り。俺が掴んだ情報では3人だ。それも上村を有能なビジネスマンとして認識している人間ばかり。」
坂本の顔が驚愕に彩られた。じっと榊原を見詰め、ゆっくりと口を開いた。
「ということは、あと一人、もう一本テープがあるってことだ。」
「ほう、さすがに坂本警部だ。既に一本は確保しているわけだね。」
「ああ、顧問弁護士の丸山だ。徹底的に洗って、締め上げてやった。そしたら金庫の奥から厳重に梱包されたテープを出してきやがった。上村にばら
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