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シンクロニシティ10
第十三章
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「ええ、同郷なんです。ふたりとも岩手です。」
「本当か、高嶋さんは訛りがないから、てっきり東京近郊の出だと思っていたが、岩手県人か。」
「ええ、そうなんです。でも、高一の時に東京に越してきたので、ほとんど東京人だと自分では言っています。」
「しかし、高一まで岩手にいたわりには全然訛りがないな。」
「ええ、まったくです。私だってまだ抜けてないですからね。でも、あの人と二人きりのときは郷里の言葉で話すんですけど、何となくほっとするんですよ。」
 榊原は山形弁で話す高嶋を想像し、思わず微笑んだ。まるでイメージが合わないからだ。
あの澄まし顔の高嶋がズーズー弁を話すところを見てみたいと思った。後を犬山に任せ、待ち合わせの場所に急いだ。 

 午後9時、上野駅前の飲み屋で坂本警部と待ち合わせをしていた。厭な奴にしかも厭な時に、呼び出されたものだ。坂本の用件は大体分かっていたからだ。
 坂本警部は既に、約束の飲み屋の座敷で日本酒を手酌で飲んでいた。肴はない。榊原が入ってゆくと、相好を崩して杯を置いた。笑うと意外に人懐こい顔である。榊原が声を掛けた。
「随分と洒落た靴が外にあったが、あれはあんたのか。」
「ああ、ウエスタンが好きでな、あれは俺の自慢の一品だ。テキサスで買った。それはそうと、もしかしたら来てくれないと思っていたよ。あんたにとって汚職警官ほど唾棄すべき存在はないからな。良かった、ほっとしたよ。よし、すぐに肴を注文しよう。」
立ちあがって、階下に声を掛けた。

 女中がテーブルを整え出てゆくと、坂本はお通しに箸をつけながら言った。
「榊原さん、例のモノを手に入れたらしいね。中身は見たんだろう。」
坂本は杯を傾けると、じっと榊原を見詰めた。
「磯田副署長も、ふざけた真似をしたものだ。相手はヤクザだ。」
榊原のきつい言葉を聞いて、坂本は不服そうに俯いてたが、暫くして顔を上げた。
「だから磯田さんは責任をとって自殺した。」
その噂のことは高嶋から聞いていたが、惚けて答えた。
「自殺だって、脳溢血だと聞いてる。」
「いや、自殺だ。何の証拠もないが私は自殺だと確信している。あの日、磯田さんは二時間も平山署長に責め続けられた。その平山署長から開放されてすぐに帰宅した。そして死んだ。連絡を受けて最初に駆け付けたのは平山署長だ。遺体はすぐに警察病院に移され、死因が特定された。恐らく死因は改竄されたんだ。平山にとってそんなことは容易いことだ。」
「それだけでは自殺だと決め付けるわけにはいかない。」
「確かにその通り、しかし目撃者がいる。」
「奥さんか?」
「まあ、家族だ。私はデカとして磯田さんを心より尊敬もし、親しくお付き合いもさせて頂いた。独身時代から家に呼ばれ晩酌のお相手を
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