第十一章
[9/9]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
奴ですぜ。」
動揺したのか、組長の口調が可笑しい。嘘はついていない、と見た。
「そちらのお兄さんも納得したのかな。」
無表情を装っていた飯島もさすがに感情を剥き出しにした。
「おいおい、俺があの餓鬼を誘拐したとでも言いたいのか、とんでもねえ。そんなヤバイことする訳ねえだろう。だって何の得にもならねえじゃねえか。」
確かに何の得にもならないのである。MDの中身を知るわけでもない洋介の口を塞ぐ必要はないし、まして盗まれた恨みを晴らすほどのこともないのだ。榊原も首を傾げざるを得ない。榊原が飯島を睨み付けた。
「飯島さん。あのMDの中身は何だい?」
一瞬、言葉に詰まった飯島に、組長が言った。
「おい、何でも喋ってしまえ。あんな奴の肩を持つこともないだろう。昔の親分かなんかは知らないが、おかしな疑いを掛けられるよりはましだ。」
意を決したのか、飯島が重い口を開いた。
「実は、ある小さな製薬会社の研究員が、或る人を通して、笹岡さんに、つまり、私の前の親分なんですが、これに売り込んで来たんだそうです。笹岡さんは相当の金額を払ったようです。」
そう言って、ひと息ついて続けた。
「私がお話出来るのは、ここまでです。これ以上のことは知りません。もっと知りたいのであれば、あとは笹岡さんを探すことですね。」
榊原が笹岡の連絡先を聞くと、飯島は笹岡の携帯の番号は知っているが、住所は知らないという。笹岡のフルネームと電話番号を聞き出し、事務所を後にした。
歩き出すと携帯を取りだし、番号を押した。しかし案の定、予想した反応が返ってきた。「・・現在この番号は使われておりません・・」
ちくしょう、と舌打ちをして、榊原は歩き出した。手間を掛ければ何とか笹岡に辿り着けるだろう。その面倒な仕事は高嶋方面本部長に頼むことにした。出世の糸口を見つけ有頂天になっている高嶋であれば喜んで引き受けてくれるはずである。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ