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シンクロニシティ10
第十一章
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ということは、先般、榊原がDVDを入手したというのは芝居だったということになる。」
坂本警部がそれに答えた。
「その偽情報を上村に流したのがいけなかったのかもしれない。上村がすぐに反応して尻尾を捕まれた。」
「厭な奴に先を越された。」
三人は悔しそうに顔を見合わせ、押し黙った。しばらくして駒田課長が重い口を開いた。
「DVDを預けた先が、はたしてその歯医者だけならいいのだが。あの用心深い上村のことだ、何人かに預けている可能性もある。」
それまで黙っていた石川警部が宙を睨みながら口を開いた。
「もしかしたら、その預け先の情報を榊原が掴んでいる可能性はないですかね?」
はっとして、駒田課長が石川を見て言った。
「石川警部、そこだ。その可能性もある。何とか、榊原から情報を引き出せないものか。」
横から坂本警部が口を挟んだ。
「奴を、俺と同じように、警部にしてやったらいいじゃないですか。やっこさん性懲りもなく昇進試験を受けているらしいし。」
薄笑いを浮かべる坂本をちらりと見て、駒田課長は声を押し殺して言ったものだ。
「そんなこと、絶対に許さん。あいつには絶対に日の目を見させるものか。高嶋方面本部長がいなくなったら、まずは本庁から放りだしてやる。それからゆっくり料理だ。」
坂本がやり返した。
「上村を叩き潰すためにはDVDの確保は絶対条件です。DVDがなければ、奴等の言いなりになんかならなくて済む。榊原だって話せば分かります。私に任せてもらえませんか。」
「あいつは、小川総務部長を脅したんだぞ。いいか、あいつはDVDを利用して自分の保身を図るつもりなんだ。いや、それをもって我々を脅しにかかるかもしれん。そんなことは私が許さん、絶対にだ。とにかく、榊原を懐柔するなどもってのほかだ。」
うんざりしたような顔で坂本が答えた。
「俺は、責任を取って自殺した磯田副所長の無念を晴らしたいだけだ。あんた達、警察庁キャリアの意地と自己保身に付き合うつもりはない。あんたは元池袋署長だった二課長の平山に泣き付かれただけだろう。平山は、あんたの可愛い後輩だ。DVDを回収してくれって頼まれたんだろう。」
「何を言っている。磯田は自殺じゃない。何度言えばわかるんだ。」
「あんた達が事実を隠蔽したのは分かっているんだ。」
「馬鹿も休み休みいえ。私はその当時静岡にいたんだ。隠蔽も糞もあるか。」
「そんなこと言っているんじゃない。あんた等キャリアのことを言っているんだ。平山にとって、直属の部下が自殺したなんて汚点を残したくなかった。だから脳溢血と診断書を改竄したにちがいない。もし、平山が磯田さんに詰め腹を切らせたとしたら、平山も許るさん。」
駒田四課長の薄い唇がぶるぶると震えている。坂本は駒田を睨みつけていた
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