第十一章
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原さん、そのDVDをどうするつもりです。」
「まだ決めたわけじゃありません。どうするか、ゆっくり考えます。」
「それを破棄するわけにはいきませんか。」
「それは出来ない相談です。事件では二人の犠牲者が出ています。そしてそのDVDによって捜査が撹乱され立件出来なかった。」
「それは分かります。しかし、そのDVDがあったとしても上村組長の弟の事件を立件できるわけじゃない。死んだ磯田副所長の顔に泥を塗るだけです。前にも言いましたが、私は磯田副所長には大変お世話になった。ですから、それを表に出したくないのです。」
榊原はじっと高嶋の目を覗き込んだ。その目には忸怩たる思いが秘められている。やはり餞別を受け取っていたのだ。見抜かれたと思った瞬間、高嶋は諦めたような表情をすると、おもむろに口を開いた。
「ええ、榊原さんの推察通り、確かに私も選別は受け取っています。最初に受け取った時には悩みました。しかし、一度受け取ると、二度目は悲しいかな抵抗ありませんでした。餞別をかき集め骨を折ってくれた副所長に恩を返せばそれで終わりですからね、ギブ&テイクです。」
高嶋はここで言葉を切り、溜息をつくと続けた。
「情けない話ですが、最初に受け取った時、私には金で縁を切りたいと切望していた人がいたのです。それは育ての親でした。」
「ほう、それは不幸なことだ。」
「ええ、本当に不幸な巡り合わせです。この前お話したように、私は母をなくして、近くの父親の親戚を盥回しにされ、最終的には母方の叔母の家に落ち着きました。当時、叔母の家は裕福で大学卒業まで面倒を見てくれました。しかし、」
「叔母が零落して、金をせびるようになった?」
「その通りです。叔父が死んでみれば借金だらけだった。貧すれば鈍すとはよく言ったものです。」
「高嶋さんも顔に似合わぬ苦労をしてきたわけだ。」
「ええ、兎に角自由になりたかった。」
「そんな時、大金が転がり込んできた。」
自嘲気味に笑い、高嶋が答えた。
「ええ、それ以後は毒食らわば皿までの心境です。でも、現場の警察官に対する罪悪感は心の底で澱んでいました。そして、たった今、DVDの中身がそれだと知って、榊原さん。私が何を考えたと思います?」
「いや、さっぱり分かりません。」
「やっぱり、神様はいるんじゃないかってことです。お笑いになるかもしれませんが、本当にそう思ったのです。私が一番気にしていることを、ずばり目の前に突きつて見せた。まさに驚くばかりです。」
「そのようなことは間々あります。厭だ厭だと避けようと念じていれば、自ずと厭なことに直面する。不思議な偶然です。」
「ですから、もう餞別は受け取りません。磯田副所長の切羽詰った思いを考えれば、そんなことは二度と出来ないでしょう。でも、榊原
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