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シンクロニシティ10
第十一章
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る。高崎の件はどうやら忘れているらしい。高嶋は書棚から分厚い資料を取り出し机の上に広げた。榊原が覗き込むと、そこには複雑な化学記号が並んでいる。高嶋がページをめくってゆく。
「この後半の部分は動物実験の膨大な薬品投与経過とその結果が書かれています。恐らくこれは盗まれたものでしょう。そうとしか思えない。」
榊原は、たいして興味はなかったが、資料に覆い被さるように見入った。
「やはり元ヤクザの情報ブローカーは存在したってことですか。」
「ええ、そうです。今、この新薬の特徴を要約して、製薬会社に問い合わせています。もし、盗まれたものであれば、その情報ブローカーを引っ張ろうと思ってます。」
「それはちょうどよい。今日、その情報ブローカーと繋がりがある男に会います。」
高嶋がちらりと榊原を一瞥して、嘆息しながら言った。
「そろそろ、ことの詳細を教えてくださいませんかねえ。」
 榊原は洋介がMDを奪うことになった詳細について、つまり晴美の義理の父親を探っていたこと、その後、上村と会ったことも報告はしていない。高嶋とは、あくまでもDVDの件で協力しているに過ぎないからだ。高嶋はそのことに不満を抱いている。
「まあ、いずれ必要とあれば話しますが、MDの件は、ただの若者の好奇心から発したことです。」
「とりあえず、そいうことにしておきましょう。兎に角、何とか、その男からそのブローカーの情報を仕入れて下さい。今のところ、製薬会社から何の反応はありません。大手にばかりに絞ったのですが、今後は中小にも広げる必要があるのかもしれません。」
 高嶋は新たな犯罪の芽を見出し、それに夢中になっているようだ。高崎の件は眼中にないようである。榊原はそうそうに部屋を後にしようとうした。その時、高嶋がふと思い出したような素振りで榊原に声を掛けてきた。
「そういえば、高崎の安岡邸を出るとき、DVDくらいの大きさのものを小脇に抱えていたそうじゃないですか。榊原さん、そろそろその内容を教えてもらえませんかね。」
榊原はぎくっとして振り返ると、高嶋がにやにやしながら続けた。
「私のスパイは優秀でね、駒田のそれとは比較になりませんよ。」
榊原は溜息をつきながら言った。
「つけられていたとは、思ってもみませんでした。まいりましたね、これは。」
「どんなことでも確かめるのが性分でしてね。どうぞ遠慮なく仰っしゃって下さい。成果がなかったと言ったのは、私を騙そうとしているんじゃなく、私に遠慮してのことだと解釈しています。」
 榊原は観念し「気を悪くしないで下さい」と前置きし、DVDの内容をつぶさに語った。高嶋は黙って聞いていたが、最後にふーと長い息を吐いて両手で顔を覆った。長い沈黙の時が流れた。そして高嶋が静かに口を開いた。
「ところで、榊
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