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シンクロニシティ10
第十一章
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に預かってもらう必要があったんだ。」
「おいおい、ってことは警視庁内部にも敵がいて、同僚も信用出来ないってことか。」
榊原は、苦虫を噛み潰したような顔をして頷いた。石田は旧友の顔をしみじみと見入った。「分かった預かろう。」
二つ返事で答えて、それ以上のことは聞かなかった。
 
 それから小一時間ほど話して二人は分かれた。石田は家に帰ると早速包みを開いてDVDをデッキに差し込んだ。

 二人の男が映し出され、なにやら話している。二人とも紳士然とした身なりだが、どこかヤクザじみた印象がある。
 鼻の曲がった男が鷹揚に頷き、白髪混じりのごま塩頭が、揉み手をしながら頭を下げて、「餞別をかき集めたが、100万ほど足りない」と言う。鼻曲がりが、細い目を見開いてこう言ったものだ。
「おいおい、磯田さん、あんたが言う一本とは100万か。ってことは、つまり、平山署長の餞別が○千万円(注1)ということになる。こいつは驚いた。だって平山さん、池袋署の署長、2年しかやってねえだろう。その餞別が…それはヒデエな。」
「そうなんだ、うちは元々ノンキャリアが署長を勤めていたんだが、今回警察庁のごり押しで、キャリアがなっちまった。キャリアだとそれが相場だそうだ。俺としても出来るだけのことしたい。裏金からありとあらゆる関係業界から集めたが、どうしても100万足りない。」
「それで、思い余って俺の所に来たって訳だ。」
「ああ、ヤクザの親分さんではなく、実業家のあんたになら頼んでもいいかと思ってよ。」
へへへと笑ったごま塩頭の顔に卑屈な表情が浮かんでいる。鼻曲がりが、おもむろに立ちあがると、「一包みほど持ってこい」と電話で指示した。
 しばらすると、若い男が紙袋を携えて入って来て、鼻曲がりに渡そうとする。すると鼻曲がりは顎を前に突き出した。顔を伏せるようにしていたごま塩は、しかたなく若い男に視線をむけた。若い男はにやりと笑い、袋をテーブルの上に置いて、一礼して去った。鼻曲がりが口を開いた。
「俺達の商売は原価は低いが、全く無いってわけでもねえ。時には命をはることもある。その点、キャリアってのは俺達の向こうを張ってやがる。税金も納めないってわけだ。」
「ああ、二年ごとに、新しい任地で同じようにしてもらうって訳さ。」

 石田は、大体の察しはついた。榊原からキャリアの餞別の話を聞いたことがあったのだ。その餞別は、三箇所回るとまさに家が建つ金額になると言う。まさか、ごま塩はDVDに撮られていようとは想像もしなかったようだ。何度も頭をさげながら部屋を出ていった。
 石田は知るよしもないが、このごま塩男はこの後自殺した池袋署の磯田副署長である。副署長の表情には必死さがあった。脂汗を浮かべた顔はてかてかと光っていた。卑屈に捻じ曲げられた
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