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シンクロニシティ10
第十章
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り戻して言った。
「ただし、盗聴の話を出してもらっては困る。分かるだろう、その辺のところは。それから、もしその結果が分かれば、あと二人の男の情報も流そう。」
「つまり、上村は三人にビデオを預けているってわけだ。おい、その残りの二人の情報は、今って訳にはいかないのか。」
「いや、駄目だ。結果を聞いてからだ。おい佐々木、その高崎の野郎の名前と電話番号と住所を書いてやれ。」
暫くしてメモを榊原に渡すと、二人は立ちあがった。中川はレジを素通りして、片手を挙げた。転がっているお銚子を一瞥し、榊原はその後ろ姿に舌打ちした。

 高崎駅でタクシーに乗り込んだ。瀬川はどうしても行くという。榊原は怖いものなしの心境だが、瀬川の将来を考えれば同席させたくはなかった。緊張の面持ちの瀬川を横目に、一度訪れたことのある高崎の町並みを眺めた。
 
 行方不明のOLは渋川出身だった。吾妻川沿いにへばり付くように田畑が広がっている。両父母が細々と農業を続け、兄は渋川市役所に勤めていた。娘の無事をご先祖様にお願いしているという母親は、榊原と話しながらも仏壇に向かって何度も手を合わせていた。
 その帰りに高崎市に寄った。上村兄弟が育った街。兄は中学を卒業すると、父親が生前属していたテキヤの門をくぐった。母親思いの兄は努力してのし上がっていった。一方、弟は兄の送金によって何不自由ない生活を送った。
 兄は、高校を退学になった弟を随分と甘やかした。高校で弟がグレ出したのも、バックにヤクザの兄がいるという虎の衣を借りてのことだが、終いには自分が虎だと勘違いしだしたことが原因だったようだ。
 タクシーは駅前通りをまっすぐ進み、市役所を左に見ながら道なりに左に折れた。のっぽビルの市役所を左に見ながら観音山に向かう。タクシーは山際の緑に囲まれた邸宅の門前に止まった。
 
 女中に通されたのは、目を見張るような豪華な応接間だった。お客を通すだけの部屋にこれだけの調度品を用意する家があるのかという、ごく庶民的な感想に榊原は思わず苦笑した。瀬川は目をまん丸にして眺め回している。
 お茶が出され、暫くして上背のある上品な男がドアを開けて入ってきた。年零は58歳。歯科医院は数人の勤務医に任せているとのことだ。その安岡が何故、上村の依頼を受けビデオを預かったのか全く理解出来なかった。
 突然の電話の非を詫び、それでも快く会見を受け入れてくれた礼を言って、榊原はいきなり核心に迫った。
「ところで、突然、なんですが、社会的な地位があり、群馬県の良心と言われる安岡さんが、何故、暴力団の組長のお先棒を担ぐんです?」
安岡はお茶に手を出し、ゆっくりと口に運んだ。脅し文句に微動だにしないという意思が働いている。
「何のことでしょう。」
「二人のお嬢さんが被
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