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シンクロニシティ10
第十章
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いる。」
そう言って、にやりと笑った。中川の片目もそれに応え、舌なめずりして口を開いた。
「つまり、上村組長がそれを確かめるべくのこのこ動くかもしれん。或いは、お前を狙うか、渡りをつけてくるか。相変わらずエグイことをやってくれるじゃねえか。」
「ああ。そうだ、聴盗法成立以来電話による重要情報の交換は誰もが避けている。だからワシがDVDを入手したと知ったら、それを確認するために上村が自分で動くと踏んだ。」
中川がにやりとほくそ笑み、唇を捻じ曲げながら言った。
「榊原さんよ、それはあんたの常識であって、全ての犯罪者のそれじゃない。ここだけの話しをしよう。後輩もいることだしな。いいか、上村は我々の聴盗に全く注意を払っていなかったぜ。」
にやりと笑う中川に対して、榊原は一瞬虚をつかれ目を剥いてた。動揺を悟られまいという心などどこかに吹き飛んだ。取引としては最悪だ。もう頼み込むしかない。息堰切って言葉を吐いた。
「つまり、DVDを預けた相手に電話を入れたってことだな。いや、DVDと言ったかどうかは分からない。兎に角、誰かに預けたブツの安全を確認したってことだ。そうなんだろう。おい、頼む、頼むから教えてくれ、頼む。」
「ああ、DVDとは言っていない。我々も、全くのど素人がブツを預かっていると知った時には驚いた。我々としてはヤクを預かっていると解釈するしかなかったからな。それで、そいつの身辺を洗った。」
ここで気を持たせて、中川が煙草に火を点けた。瀬川も中川を注視していたが、煙を吐き出す間も待てなかったようだ。
「先輩、じらさないで教えてください。頼みますよ。」
漸く、中川が煙を吐き出して、続きを話し始めた。
「その相手は高崎市の歯科医だ。息子は国立の医大を出て勤務医。娘は嫁いでいる。土地持ちで金は余るほどある。そんな奴がヤクに関係する訳がない。上司は最初からびびっている。しかし、俺達も、預かっているブツが何であるのか知りたい。」
そこまで言って長いタバコをもみ消した。もう笑っていない。。榊原が反論した。
「本来であれば、お前らがやったほうがゲロする確立は高い。預かったブツがヤクの疑いがあるとなれば、そうでないことを証明せざるを得ない。そうじゃないのか。」
「ああ、そうだ。だが俺達には手が出せない。」
「何故、バッチか?」
「ああ、或国会議員の、それも厚生族議員の後援会長だ。」
「つまり、ワシであれば問題ないと?」
「ああ、キャリアのスキャンダルを暴こうって訳だろ、榊原さん。怖いものなしだ。違うか?」
今度は榊原が優位に立った。中川の片目が真剣な色を帯びている。それぞれに事情がある。榊原は頷いた。
「そうだな、ワシの方が適任だ。まして、DVDの確立の方が高そうだ。」
中川は再び笑顔を取
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