第十章
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。」
「そういうお前はどうなんだ。六本木の遊び人に化けたつもりだろうけど、エンブレム付きの紺のブレザーなんて今時流行らねえし、まして、その着こなしじゃあ、まるで七五三じゃねえか、千歳飴でも持っていれば、そのものずばりだ。」
榊原は、あまりにぴったりの表現に思わず吹き出しそうになるのをようやく堪えて、睨みあう二人の間に割って入った。
「おい、瀬川、そいつは言い過ぎだ。中川捜査官はお前の大先輩だぞ。」
一瞬、瀬川の凄んだ顔の筋肉が伸びきった。
「えっ、ってことは明大柔道部ですか?」
「ああ、そうだ。おまえさんもそうか。こりゃ参ったな。根性はあるし、言うことは鋭いし、どこか並じゃないとは思っていたんだが。さすが明大柔道部だけのことはある。何年卒だ?」
「はい、自分は平成十一年卒であります。」
今までの険悪な雰囲気が一気に和んで、中川も鷹揚な先輩を演じ始めた。互いのエールの交換が終わると、酒で顔を赤く染めた中川が、もう一人の佐々木捜査官を紹介し、榊原に向き直った。
「榊原さんよ、あんたにはいろいろ世話になっている。だけど、今回だけは譲れない。横取りは許さんということだ。色々瀬川君に聞いたけど、さすがに口が固くて頑として喋ろうとしない。あんたに直接聞くしかないと思ってよ。」
この野郎から瀬川君ときた。体育会系の同じ釜の意識は強い。
「その前に聞いておきたいのだが、上村組長が麻薬に関係しているってことか?」
「それに答えるわけにはいかん。」
「もう、答えているのと同じだろ。組長が狙いって訳だ。しかし、あそこは組員に対する麻薬売買の禁止は徹底している。それは有名な話だ。まして、風俗、金融、土建、運輸業まで、かなり手広くやっている。そんな上村がヤクなんて危ない物に手を出すとは思えない。」
「それは我々が納得するか否かの問題だ。兎に角、桜田門が回りでうろうろされると目障りなんだよ。俺達は何ヶ月もあいつらを追っている。それが、昨日今日、いきなり出っ張ってきて、俺達の前に現れた。」
「分かった、そいつは謝ろう。だが、我々が追っているのはヤクじゃない。失踪事件と殺人だ。」
「そうだとは思っていた。ということは、例の5年前の事件だな。」
「ああ、そうだ。お前も過去を洗ったんだろうから薄々何か感じているんだろう。」
「ああ、薄々だ。確信はない。」
「おい、面白い話を聞かせてやるよ。その事件に警察庁キャリアが絡んでいる。勿論、犯罪に絡んでいるわけじゃない。恐らく、上村組長はキャリアの弱みをつかんで、捜査に揺さぶりをかけてきたんだ。」
キャリア嫌いの中川の片目が光った。榊原が続けた。
「ワシ等が探しているのはDVDだ。そのビデオをワシが入手したという情報を警視庁内部で流した。実は警視庁内部に上村のスパイが
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