第九章
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んが。」
高嶋はにやりと笑みを浮かべると口を開いた。
「榊原さん、あの上村組の事件の直前に池袋署の磯田副所長が脳溢血で亡くなったのはご存知ですか。」
「ええ、香典を包んだ覚えがある。」
「そして、その死を自殺じゃないかと言う者がいる。実は私はその磯田さんには大変世話になった。だからその噂を捨てては置けないと思っている。」
「しかし、それは単なる噂なんでしょう。」
「ええ、噂です。ですが、どうも気になることがあるんです。それは磯田さんの死の直後に坂本警部補が警部に昇進し、本庁に戻された。これをどう思います。」
「つまり、坂本はキャリアに関する不祥事の秘密を握っているということですか。そして、その秘密は磯田副所長の自殺に関係があると?」
高嶋は、ゆっくりと首を縦に振った。榊原が確認するような口調で聞いた。
「そして、高嶋課長はその不祥事を明るみに出しても良いと思っているんですね。」
「ええ、かまいません。ところであの事件について、榊原さんはどうなんです?ある程度、掴んでいるんですか。」
「ええ、或る程度は……。では、これだけはお話しておきましょう。その不祥事に関するDVDが存在します。何が映っているのかは分からない。恐らく、その中に、当時の池袋署の平山署長か或いは磯田副所長に関する何かが映っているのかもしれない。」
「それは知らなかった。しかし、上村組の事件は誰もが蓋をしようとしている。それだけ臭い事件だということです。その事件にどっぷりと首を突っ込めば、まさに足をすくわれる恐れがある。ですから、ことは隠密裏に運びましょう。協力は惜しみません。」
榊原が頷いた。高嶋は口元を引き締め、手を差し伸べて言った。
「共同戦線成立ですね。」
榊原はその手を強く握り締めた。高嶋なら信頼に足る人物であることは確かだ。しかし、そのDVDを得るための秘策については話さなかったが、いずれ協力を頼まなければならない。
上村組の事件は、榊原が石神井の捜査本部に詰める前まで、必死で追いかけていた事件である。OLの失踪とホステスの自殺に絡むもので、被疑者として組長の弟正敏が浮かび上がったが、いずれの事件でも正敏を挙げるには至らなかった。失踪したOLも自殺したホステスも正敏の元愛人である。
ことの起こりは、顔に青痣を作ったOLが池袋署に保護を求め駆け込んだことから始まった。OLは一月ほど前に組長の弟、上村正敏と知り合い、彼のマンションで暮らし始めた。フリーのジャーナリストという触込みで、最初はヤクザなどとは想像もしなかった。しかし、知らず知らずのうちにヤク中になっているのに気付き逃げ出したのだ。
この時、OLの対応に当たったのが池袋署のマル暴だった坂本警部補で、彼はただちに正敏を引っ張った。しかし薬物反応が
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