第八章
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告訴したわけじゃないだろう。」
眠っていると思った中畑が突然声をあげた。
「うるせいな。眠ってもいられねえ。おい、飯島、いいかげんにしろよ。この榊原って刑事は信用の置ける人間だと組長に言ってある。だからこうして会っている。榊原さんが、やってないと言えば確実にやってない。お前が、ここでごたくを並べてどうする。えっ、組長の面子はどうなる。」
二人は睨み合った。先に視線をはずしたのは飯島だ。上村組長が引き継いだ。
「まあ、そういうことだ。榊原さんがコピーしていないと言っているんだ。俺は信用している。中畑さんがそうおっしゃっているんだ。お前はもういい、下がってろ。」
不承不承といった面持ちで、飯島はドアに向かった。中畑がさっと立ちあがり、組長に長々とお礼の口上を述べ立てた。まるでヤクザの仁義みたいだ。笑いを噛み殺していたが、頭を下げるタイミングだけは中畑に合わせた。
外に出ると、中畑は開口一番榊原に言った。
「どうせ、コピーとってあるんだろう。」
「いや、若者の将来がかかっているし、仁義に背いくわけにはいかん。だから、コピーはとっていない。」
「そいつは榊原さん、正解だぜ。奴らと付き合うには仁義を守ることが一番だ。」
二人は駅に向かって歩いた。実を言えばコピーはとってある。上村組に関する情報は何でも欲しかったからだ。しかし、石田も、さらにモンスターでさえMDの暗号は全く手に負えなかったのだ。
警視庁の公安に持ちこめば、その手の暗号解読の部署があり、そこに頼めばよいのだが、刑事課と公安課は全く接触がなく頼む伝手もない。やはり、あの人を通じて頼むしかないかもしれない。
今日、行くつもりはなかったが、キャリアで信頼でき、しかもコネクションがあるのはあの男ぐらいだ。石田にキャリア批判をぐだぐだと話している時も、この男のことが頭に引っかかっていた。友人としてここ数年つき合ってきたのだ。
その友人とは、今日、新宿に榊原を呼び出した高嶋四課長である。CDを解読するには高嶋の手を借りるしかない。高嶋が小川総務部長を慌てさせたあの一件で呼び出しをかけたことは分かっている。榊原は憂鬱な気分で歩いた。
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