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シンクロニシティ10
第八章
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おいおい、また有給かよ、余裕のある民間はいいよな。」
「それより、お前に頼みがあるんだ。」
「ああ、聞いた。洋介君のことだろう。幸子さんと昨日会った。」
少し間をあけて、不思議そうな声が響いた。
「お前たち随分頻繁に会っているんだな。」
榊原は二人の仲を隠すつもりはなかったのだが、何故かうろたえた。
「いや、頻繁に会っているわけじゃない。たまたま訪ねてきた。よほど洋介君のことが心配だったんだろう。晴海さんに頼まれたらしい。」
「ふーん、そういうことか。まあ、そんなことはどうでもいいんだが、兎に角、ただごとじゃない。」
「お前は、洋介君から直接聞いたのか。」
「ああ、聞いた。」
「それじゃあ、洋介君を追いかけたヤクザの組の名前はどうなんだ、洋介君から聞いているのか?」
「ああ、確か上村組と言っていてな。池袋に本拠を置いているらしい。」
 榊原の心臓が高鳴った。どくどくと音を立てて脳神経の末端まで流れ込んでゆく。上村組と言う言葉が脳内でこだまする。そうだ、この偶然なのだ。この偶然の一致こそ、すべてを支配するお天道様の業なのだ。このはっとするような発見と偶然がなくして、どんな推理もそれ以上飛躍しない。
 それが夢であったり、期待もしていない人の証言だったり、過去の事件との出会いだったり、全てが仕組まれているように、時空を超えた偶然の一致が、まるで真実に近づけるために配置されているように、そこに配置されているのだ。榊原が叫んだ。
「おい、今何て言った。上村組だって。本当に東池袋一丁目の上村組か。」
「おいおい、一丁目だか二丁目だか、俺には分からん。兎に角、池袋の上村だ。」
榊原は押し黙った。血流は体全体を駆け巡っている。
「それから、何故、モンスターが洋介の携帯番号をしっていたのか聞いたか?」
「いや、聞いてない。親が分かったんだから、その線で調べたんじゃないか。探偵だから色んな、例えばNTTとかのコネクションもあるだろうし。」
幸子と同じ答えが返ってきた。
 いずれにせよ、上村組と聞いて自分の勘が真実味を帯びてきた。偶然の一致にこそ全ての謎を解く鍵が隠されている。誰もが単なる偶然の一致と退ける事項にこそ、実はこの世の秘密が隠されていることを、榊原は経験から知っていたのだ。
「おい、榊原どうした。上村組ってことが、そんなに興奮することだったのか。」
「ああ、そうだ。お前は何度もワシに言っていただろう。何といったかな、あの、英語。偶然の一致みたいなニュアンスの、、、」
「シンクロニシティだろう。ユングの言う、意味のある偶然の一致というやつだ。俺に言わせればそれに縁を結びつけたいね。かつて、南方熊楠という学者が因果律に縁を結びつけたように。」
「難しいことは分からんが、とにか
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