第七章
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いた。
「あんたは誰だ。」
「そんなことはどうでもよい。今君は敵の罠に嵌ろうとしている。すぐに、その場所から離れることだ。もう十分ほどしたらもう一度電話をいれる。」
背筋にひやりとする感覚が走った。洋介は脱兎のごとく駆け出した。広い通りに出て、滝野川方面に走った。しばらく走って、ちょうど歩行者用信号が青になったところで、反対側に渡った。後ろを振り返りつつ、歩道を走りに走った。
タクシーが近付いてくる。通りに出て、手を上げた。タクシーが止り、乗り込んだ。自分を見張っていた男からも逃れたかったのだ。しばらくして、携帯が鳴った。
「まさに脱兎のごとくとはよく言ったものだ。ハッハッハ」
男の高笑いに洋介はかっとなって叫んだ。
「あんはたは誰なんだ。なんで、俺のことが分かったんだ。」
「俺が誰だろうと、君には関係ない。だが、何故分かった教えてやろう。実は君が興味を示した男を、俺は何日も見張っていた。あの、便所で失態を演じた男だ。奴は情報ブローカーだ。しかし、君も思い切ったことをしたもんだ。もっとも君がやらなけば俺がやっていたがな。」
「でも、あいつ等は何故俺のことが分かったんだ。」
「君のリックが奴等の手に渡った。そのリックに君のクレジットカードのレシートが残されていた。」
洋介は思い当った。先日西武デパートで靴を買ったのだ。リックに靴を放り込んだのを思い出した。その時、レシートも一緒だったのだ。
「それに君は、今のアパートを借りる時、住民票を移しただろう。そんなことをすれば直ぐに足がついてしまう。」
「だけど、あんたはどうやって奴等の動きをキャッチしんだ?奴等が俺のアパートを張っているこがどうして分かったんだ。」
「簡単なことだ。あの日、洋介君を見失ってから、君を追いかけていたヤクザっぽい男の後をつけた。」
「あのヤクザの部屋を突き止め、見張った?」
「そういうことだ。ところで、MDはどうした。」
「持っている、いや部屋に置いてある。」
「どこの部屋だ。」
「それは言いたくない。それより、あの男が情報ブローカって言っていたけど、それってどういうこと。」
「つまり産業スパイだ。おもに技術情報を盗んで、競業他者に売り付けている。便所の御仁は元ヤクザだ。お前を追ったヤクザは池袋に事務所を持つ上村組。どうやら奴等は組んでいるようだ。」
「あんたは警察関係者じゃないの?」
「まあ、元警察関係者ではあるが今は民間だ。実は私のクライアントが新製品を開発した。元親分はその情報へ何度もアプローチしていた。だから張っていたわけだ。とにかく、あのMDがクライアントの開発に関するものか否か確かめたい。MDを送ってくれないか、中身が見たい。」
「ああ、もうあんなモン手元に置いておきたくありません
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