第六章
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も聞いておいたほうがよさそうだ。晴美に電話させてから、メールを送る。その後、電話で話を聞けばよい。
「ねえ、これから会えない。もう3日も会っていないのよ。」
晴海の切なくせがむような声は、いつもなら洋介の下半身をカチカチにしたものだが、今日に限ってそうはならなかった。強がりを言う気にもならないほど怯えている自分が惨めで、弱虫に思われるのはしゃくだが、恐怖のほうが勝った。
その日、洋介は夜になってから、晴美に聞いた石田仁のアドレスにメールを発信した。晴海も見たいというので送っておくことにした。晴海に分かるわけがないとは思うのだが、自分だけでこれを所有していることも不安だったのだ。
石田は晴美から連絡のあった翌日、さっそくメールを開いてみた。画面には訳の分からないアルファベッドと数字の羅列が並んでいる。数列かと思い数字を書き出してみた。しかし、何の規則性も見出されなかった。アルファベッドの羅列も全く意味が分からない。
しかたなく、いくつか持っている暗号ソフトにかけてみた。結果は更に訳の分からない文字の羅列が現れただけだ。石田はあっさりと晴美の要請を諦めた。ここで頼りがいのある父親を演じたかったのだが、無理なものは無理だ。
石田はその場で大学の後輩に電話を入れた。彼は電子工学科だったが、高校の後輩だったこともあり親しく付き合った。今は大学院に残って助手になっていた。暗号化についても詳しいはずだ。石田が名乗ると、うれしそうに返事が返ってきた。
「先輩、お久しぶりです、しばらく会ってませんね。お元気ですか。」
この声を聞いて、ぽっちゃりとしたあの丸顔を思い出した。
「実は、ちょっと頼まれてほしいんだ。俺も友人から頼まれたんだが、俺の腕ではさっぱりだ。こういうことなら押田しかいないと思って電話してみたんだが。」
「なんです。先輩の依頼じゃ断れませんけど、とりあえず話を聞きましょう。」
「実は暗号解読なんだ。」
「へー、面白そうじゃないですか。早速メールで送って下さい、やってみますよ。」
「それじゃぁ、メールアドレスを教えてくれ。」
石田は電話を終えるとパソコンに向った。仕事の方は石田の予想した通りJRが設計変更を申し入れてきたのだ。東芝電鉄との話し合いは思い通りに運ばなかったらしい。氏家部長は最初からそうなると思っていたなどとうそぶいている。
東芝電鉄の後輩の話を出して、思い出させても良いのだが、敢えて言うのは止めにした。また休暇を取ろうと思っているからだ。亜由美の父親の叔父が北九州にいることが分かったのだ。
亜由美の山梨の実家は競売に掛けられ、家財道具一式他人の手に渡っていたが、ダンボール8箱分の私物が残され引き取り手のないまま銀行の倉庫に眠っていた。先日問い合わせがあり、石田
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