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シンクロニシティ10
第六章
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かやばいことやっているんじゃないか。スパイとか何かやばいことだ。ただの会社経営者とは思えない。」
「スパイですって、そんな馬鹿な。あの人がスパイなら、私はさしずめ殺し屋ってとこだわ。実際、そんなのあり得ないわよ、馬鹿馬鹿しい。」
「でも、今日あったことは、どう考えても、ちょっとヤバイって感じなんだ。俺は拳銃を持った男に追いかけられたんだ。」
「嘘、それって嘘でしょう。まして、拳銃なんて言っても玩具の拳銃かもしれないじゃない。あなたにそれを見分けられる。本物そっくりな拳銃なんてどこでも手に入るわ。」
「そうかもしれない。でも追いかけて来た奴はまともな男じゃない。絶対ヤクザだよ、あの雰囲気は絶対にヤクザに違いないって。」
「分かったわよ、そういうことにしておくから、その絶対なんて言葉は何度も言わないで。利口そうに聞こえないわよ。何があったのか、詳しく話して。」

 洋介は混乱した頭を整理しながら一部始終を話した。聞き終わって、暫く晴美も沈黙していた。洋介が言った。
「おい、何とか言えよ。俺は、嘘は言っていない。これはすべて今日、俺が体験したことだ。お前の父親がもしかしたら営業マンにMDを渡したのかもしれない。」
漸く晴美が口を開いた。
「そんなことあるわけないでしょう。パパがスパイで、そのMDには国家機密か何かが入っているってわけ。それに、安部さん、その営業マン、安部さんて言うんだけど、彼が独自でやったことかもしれないでしょう。パパは関係ないわよ。」
「それは、そうかもしれない。でも、可能性は常に考えておかないと。それから、中身を開いてみたが、何がなんだかさっぱり分からない。アルファベットと数字の羅列だ。もしかしたら、暗号化されているのかもしれない。お前、誰か知っていないか。こういう電子的なこと詳しいやつ。」
「知らない、私の回りにそんな人いるわけないでしょう。」
 晴美は苛立っているようだ。たとえ憎んでいる父親であったとしても、スパイなどという暗い非日常の世界と繋がっていると思いたくないようだ。洋介は一歩引くことにした。
「それもそうだ、まして晴美は高校生だもんな。」
この言葉に晴美はほっとして、その忌まわしい洋介の物語を心の片隅に追いやった。そして言った。
「あっ、そう言えば、仁さんが詳しいみたい。CADとかいうパソコンをやっているって言っていたわ。」
「CADか、ああ、何か聞いたことあるな、それ。それに仁さんは、確か理数系だったよな。それにパソコンやっているなら俺より詳しいに違いない。仁さんのメールアドレス分かるか。」
「ええ、確か名刺に書いてあったはずよ。この前デートした時、貰っておいたの。ちょっと待ってて。」
電話口の向こうで、ごそごそと音が聞こえてくる。アドレスと一緒に電話番号
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