第六章
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マンの後をつけてみようと思い立った。洋介はジャンパーとリックを握ると部屋を蹴って出た。ドアの鍵を掛ける暇もなく駅に急いだ。営業マンは東口、洋介は西口、ホームで捉えられるはずだ。
切符を買うのももどかしく、改札を抜けた。階段を駆け上がり、ホームに出ると息を整えながら急ぎ西口の階段に向った。営業マンは、既にホームに立って新宿方面の電車を待っていた。洋介はかなりの距離を置き、上野方面の電車を待つ振りをした。
新宿方面の電車が入って来る。じっと機会を窺がった。男が電車に乗り込む瞬間、踵を返した。電車に乗ってから距離を縮めた。夕刊を見る振りをしながら、視線だけは隣の車両に向け男の様子を窺がった。
男は池袋で降り、ゆっくりと階段に向った。洋介は男の頭が階段で徐々に下がってゆき、それが消えた時、新聞をたたんで後を追った。見ると男は階段を降りきったところだ。洋介は気付かれぬよう距離を置いて人の影に隠れるように進んだ。
地上に出て、男はスターバックスーに入っていった。洋介は迷ったが、煙草を一本吸い終えて、その店にに向った。歩きながら中を覗くと、男が道路に面した席で新聞を読んでいる。洋介は入り口のドアを押して中に入った。
レ ジでコーヒーを受け取り、男を背中で意識しながら奥に向った。ちょうど男を後から見える位置に席がとれた。スポーツ紙を広げ、男を見詰めた。男も新聞を読んでいる。10分もそうしていただろうか。
男は新聞を読み終え、それをテーブルの上に置いたまま席を立った。洋介も立ちあがりかけたが、再び腰を落とした。男の隣にいた紳士然とした男が、テーブルに残された新聞を取り上げたのだ。そしてそれを読み始めた。
ロマンスグレーの髪、高級そうな背広、肩幅が広くがっちりとした体躯、その男が、隣の男が捨てていったボロボロの新聞に手を出した。何か不自然さを感じた。しばらくして男が新聞を小脇にかかえて立ちあがろうとした時、何かがきらりと光った。新聞に何かが挟まれている。 男が店を出て右に折れた。洋介は男の後をつけた。男は池袋駅に向っている。新聞を脇に挟み右手はポケットに入れて、急ぎ足で階段を駆け下りてゆく。
洋介は大股で階段に向かった。男が地下のコンコースに下り立つのが見えた。男は右手に回った。要町方面に向ったようだ。階段を降り切り、洋介もその跡を追った。
男は10mほど先を歩いている。近付き過ぎているのは分かってはいたが、興奮が体全体を包んでいた。男は急ぎ足になっている。どうやらその先に見えるWCに入るらしい。男の姿がWCに消えた。洋介は駆け出して、便所の入り口に立って中を覗いた。
男は、右手でジッパを下げると、下の物を手探りしている。今がチャンスだった。男が下の物を取りだし、尿を放出し始めれば暫くは動けない。洋介は覚悟を
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