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シンクロニシティ10
第五章
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しているはずです。あの樹の後あたりでしょう。」
二人の警官は三人をパトカーに連行しようとして、覆面パトカーの中に人がいるのに気付いた。若い警官が振り返って榊原に聞いた。
「中にいるのは誰です。」
「キャリアだ。今お守りの最中だ。」
若い警官は、駒田を睨み付けながら言い放った。
「仲間がぼこぼこにされているのに自分は車の中で、ぶるぶる震えていたってわけだ。まったく恥を知れって。もっとも、キャリアなんて俺達を仲間となんか思っていないんでしょうけど。」
車の窓は開いている。志村巡査はわざと聞こえるように言っている。榊原は声を落として、駒田に聞こえないように言った。
「まあ、そう言うな。それにそうじろじろと見るんじゃない。奴だって忸怩たる思いがある。後は君達に任して、ワシは行くぞ。ワシから調書取ろうなんて思うなよ。」
軽く手をあげて、車に乗り込んだ。
 横目で見ると、駒田は俯いて押し黙っている。息が荒い。榊原はそんな駒田を無視して車を走らせた。長い沈黙が続いていた。駒田は言訳を懸命に考えているのかもしれない。余計な言葉など掛けないほうが無難だ。ところが、突然、駒田が榊原を怒鳴ったのだ。
「君達は何を勘違いしているんだ。私は君達とは立場が違う。常に冷静に状況を掌握し、何をすべきか判断しなければならない。そう教えられて来たし、そう訓練されてきた。研修中とはいえ、私は君の上席なんだぞ。」
榊原を睨んだ目にはうっすらと涙が滲んでいる。
「いいか、私は万一に備え署に無線で連絡しようとした。しかし、私にはそのやり方が分からない。何故なら、君は研修だというのに、そんな初歩的なことさえ教えようとしなかったからだ。君は研修を何だと思っているんだ。いいか、私はしかたなく、必死で無線機と悪戦苦闘していたんだ。」
ここで榊原は話の腰を折った。
「それが済んだら、駆けつけようと思っていた?」
「当たり前だ。こう見えても、私は東大法学部、空手部の主将だぞ。」
榊原は殴りつけたい衝動をどうにか押さえ込んだ。じっと堪えるしかない。溜息混じりに答えた。
「はい、はい、分かりました。分かりましたから、そう興奮しないで。」
この一言で、駒田が切れた。
「なんだ、その言い方は。お前は私を馬鹿にしているのか。お前は研修という目的を最初から放棄していた。その怠慢に対する反省もない。いいか署に帰ったらこのことは報告させてもらうからな。貴様は処分を免れない。かご、かく、覚悟しておけ。」
最後は興奮し過ぎて言葉が乱れた。
 榊原は車を急停車させると、駒田を睨み付けた。駒田も睨み返した。そして、鼻でせせら笑った。駒田は榊原が謝ると思っているのだ。急いで車を止めたのも、必死で頭を垂れるためだと思い込んでいる。駒田の勝ち誇った顔が、榊原を
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