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シンクロニシティ10
第四章
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女と艶やかで早熟な女の違いである。まして一番の違いは、和代は間違い無く処女だったが、晴美は既に男を知っている。濡れたピンクの唇がそう語っていた。

 妹、和代は友人三人と泊まったユースホステルを朝一人で散歩に出てそのまま失踪した。海岸を散歩する和代を新聞配達の少年が目撃している。しかしその後、警察の徹底した調査にもかかわらず、その行方は杳として知れなかった。
 和代の死体が発見されたのは、一ヶ月後のことだ。スリップ一枚で下着も着けず、その体は痣だらけだった。和代は暴行され、陵辱され、そしてぼろぼろになって捨てられたのだ。思い出すだけで、石田の体は怒りに震える。
 両親は事件解明の為、新潟に通いつめた。和代の写真入りのポスターを作り、目撃者捜しに奔走した。その両親も何の成果も得られないまま、高速道路で事故を起こして死んだ。全てが悪夢としか言い様がない。
 和代の味わった恐怖、怒り、悲しみ、絶望、想像するだけでも胸が張り裂けそうになる。当時、石田はその思いをサンドバッグにぶつけた。拳を思いきりサンドバッグに叩き付けることで、漸く心のバランスを保っていたのだ。
 石田は中野駅を降りると真っ直ぐに行き付けの飲み屋に向った。行き付けといっても、マスターに顔を覚えられ、親しく話しかけられるまでの話だ。話しかけられれば次ぎの店を捜す。
 じっくりと酒を飲む。それが目的なのだ。誰にも邪魔されたくはなかった。アルコールが脳神経を麻痺させるまで飲み続ける。ふらふらになって家に帰り、ベッドに直行する。何も考えずにすむように。
 ぼんやりと親父やお袋の顔を思いながら酒を飲む。家族旅行のことや、和代との口喧嘩のことなど、思い出しては懐かしむ。そして最後には妹の苦痛を思い、湧き起こる悔しさと悲しさを憎しみと怒りに変える。そうしなければならないと感じてきた。そうすることにより、必ず運命を引き寄せることが出来ると信じてきた。
 その運命とは男達と出会うことだ。会って復讐を遂げる。男達が許しを請う。石田は和代の写真を見せて泣き叫ぶ男達を次々と殺す。強い思いが現実を変える。強く念じることが男達との出会いを実現させてくれると信じていた。
 しかし、いくら念じてもそれは訪れない。何故なのだ。石田は何度もその不思議を体験してきた。日常で、仕事で、それは確かにあるのだ。深く強い思いが、現実を動かして、その思いを実現させるということが。
 一心に解決を望む心、或いは言葉を変えるなら、人の強い思いには、その強さゆえ何か不可思議な力が加えられ運を引き寄せる。それを信じてきた。だからこそ、復讐心を奮い立たせ、体を鍛えてきた。いつその男達に出会ってもいいように。
 そんな暗い思いが希薄になっていた時期がある。6年ほどだ。そうさせてくれたのは、二人目の妻、亜由美であり
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