第三章
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た評価は、次々と引き継がれ警察を辞めるまでついてまわる。」
「なんだそれ。」
「ワシも、つい若気のいたりでヘマをこいたのさ。」
「一発のヘマでも出世に響くのか。」
「そういうこった。ワシが警部になれない理由もその辺にある。」
こう言うと、榊原は押し黙った。濃い褐色の液体を喉に流し込み、グラスの底をカウンターに叩き付けた。コーンというその乾いた音は、これ以上聞くなと言う合図のように感じられた。誰にでも、話したくない過去がある。それは石田も一緒だった。
その榊原から連絡が入ったのは、晴海のことを聞かされて二週間ほど経ってからだ。榊原がそれなりにセッティングしてくれるのかと思っていたが、晴美の携帯の番号と会う日時と場所を連絡してきただけだ。晴美は会うことを楽しみにしていると言う。
その日、その時間に、石田は不安と期待を胸に抱きながら電話を入れた。晴美も同じ心境だろうと思っていたが、石田が名乗ったのち、受話器の向こうから聞こえた声は存外明るかった。
「もしもし、晴美です。今日はありがとう。あの…」
しかし、ここで声は途切れ、やはり緊張しているのか静かな吐息だけが聞こえる。石田も雰囲気に気圧されて何を話したらよいのか分からない。晴美が声を詰まらせながら続けた。
「今日、会えるんでしょう?」
「ああ、そのつもりで電話したんだ。今、君が指定した渋谷の駅前にいる。」
「それじゃあ、15分後に。あっ、そういえば、携帯、非通知設定になってないでしょう。」
「えっ、非通知設定。」
「つまり電話番号を相手に知らせないように設定しているかどうかってこと。さっき、電話掛かってきた時、慌てていて画面見なかったから、番号が表示されていのたか、それとも非通知設定だったかよく確かめなかったの。」
「ああ、大丈夫だ。非通知設定じゃない。僕の電話番号は携帯に残っているはずだ。15分後、その番号に電話してくれ。僕はこげ茶色のTシャツに白のジャケットを着ている。君の特徴は。」
「お父さんにそっくりだって、榊原のおっちゃんが言っていたわ。」
石田はにこりとして答えた。
「分かった。自分の子供が分からんはずがない。じゃあ、待っている。」
14年ぶりの再開ということになる。二人は喫茶店で向かい合った。ほんの数分前、二人はぎこちなく挨拶を交わし、はにかみながらも互いの血の濃さを確認し合った。その時、石田はかつてこの少女に会ったことがあるような気がした。
勿論、子供の時の晴美ではない、別の誰か。確かに会ったことがあると感じた。じっとその顔を見詰めていると、ふとその目に引きつけられた。茶色がかった瞳、切れ長の二重瞼、きりりとした眉、その面影が心に浮かんだ。妹の目元に似ているのだ。
全体的に晴美の方がすっきり
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