第一章
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欲していたのは確かなのだ。
榊原は警視庁捜査一課2係りに属し、迷宮入りした事件の継続捜査を担当している。今の捜査本部に詰める直前まで、榊原は暴力団がらみの事件を追っていた。この事件には、警察庁キャリアが何らかのかたちで絡んでいるらしく、臭いものには蓋とばかり、片隅で埃をかぶっていたのだが、蓋を開けてみれば、やはり上司の横槍が入った。
上司とのすったもんだがあり、うんざりしているところに、石神井署の捜査本部に欠員が生じたという話が舞い込んだのだ。榊原は、上司と口をきくのも苦痛になっていたため、もろ手を上げて志願したのである。
世間を震撼させた大事件である。榊原は、その捜査本部に勇んで参加したものの、捜査は何の進展も見られず、捜査員達の疲労だけが蓄積され今日に至っている。
捜査本部は事件の起きた所轄署に置かれるが、本庁捜査一課と所轄署の刑事課、それぞれの刑事がコンビを組んで捜査に当る。本庁の刑事は捜査の専門家として、また所轄署の刑事は地の利と豊富な情報量を生かし、互いに協力して捜査の効率を計るのである。
榊原の相方の原警部補は石神井署刑事課所属で、榊原より一回りも若い。その原警部補は、自分と組むのが本庁捜査一課の榊原警部補と聞いて、当初、心躍らせていた。
というのは、榊原は警視庁捜査一課ではちょっとした有名人なのである。粘り強い捜査手法と僅かな手がかりから情報を手繰り寄せる能力から名刑事と謳われ、さらに榊原がかつてキャリアを殴ったという噂はノンキャリアの警官にとって尊敬に価した。
しかし、その榊原は、捜査会議で発言することもなく、外に出れば黙々と原に付いて歩くだけで、切れ者の片鱗などどこを捜しても見えない。原はその名刑事という噂に首を傾げ、最初の頃に抱いた尊敬の念と憧憬の思いは、今ではすっかり冷めている。
榊原はガラスの器をスプーンでかきまぜると、小豆の混じった茶色の液体をぐっと飲み干した。
「最後のこれが美味いんだ。」
こう言うと、満足そうに相棒に微笑みかけた。しかし、原は横を向いたまま、呟くように言った。
「榊原さん、そろそろ出掛けましょうよ。F地区にはもう一ケ所、中外商事っていうセコハン屋があります。早く行かないと、会議に間に合いませんよ。」
そう言って、手に持った地取り捜査用の地図をポケットから取り出した。榊原はそれをちらりと一瞥して言った。
「分かった、分かった、でも、もうちょって休ませろよ。どうせ行ったところで成果なんてありっこない。よほどの素人でない限り盗品の、しかも170万もするローレックスを質入するなんて思えん。」
「でも……」
何か言いかけて原は押し黙った。同じ警部補とはいえ、本庁の大先輩に逆らうことなど出来ない。まして原も同様に感じていたのだが、無駄とは思って
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