暁 〜小説投稿サイト〜
ヴァレンタインから一週間
第22話 玄辰水星登場
[3/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


「オマエさんが何を聞きたいのかは判らないけど、俺の死を、大切な相手の喪失と感じ取ってくれている心は伝わって来て居るから、問題はないで」

 俺の事を見つめている透明な少女に対して、そう話し掛ける。
 そして、

「それに、それは多分、俺が、有希の事を思念体の元に戻さない、……と言った事と同じ心から生まれて来た言葉だとも思っているから」

 俺は、そこまで一息に告げてから、ひとつ深呼吸を行うように息を吐く。
 彼女は……。何も答えようとはしない。しかし、先ほどまで発して居た、何かを伝えたいのにその方法が判らない。何を伝えたいのかもよく判っていない、……と言う、もどかしさは影を潜めて、俺の次の言葉を待つ。そう言う雰囲気を発して居た。

「だから、大丈夫。言葉では上手く伝えられなくても、心の部分ではちゃんと伝わって来て居るから」

 何となく。本当に漠然とした感覚に過ぎないけど、彼女の心は伝わって来て居るのは事実です。
 そして彼女の心が、悪意や陰気に染まった哀しい心ではない事も……。

 僅かな空白の後、少女(有希)はゆっくりと首肯いて答えてくれました。
 表情は、普段の透明な表情。視線は、ともすれば冷たいと表現されるかも知れない硝子越しの視線。

 しかし、その言葉を伝えた後の彼女の心の内は、先ほどまでの雰囲気とは少し違う、別方向の雰囲気で満たされて居る物で有りました。

 それは、そう…………。


☆★☆★☆


「すまんな、二日も連続で水晶宮に向かう事に成って仕舞って」

 開けて、二月十七日の日曜日。

 昨夜は久しぶりに有希の寝室のベッドの上ではなく、彼女の新しいマンションの部屋の和室に布団を敷いての就寝と成った為に、ここ二日の睡眠と比べてもより深い睡眠を取る事が出来たような気がします。
 本来、俺の精神は見た目や態度。そして、言動よりはずっと繊細で、傍らに誰かが居るような状態では、本来の霊気の回復を示す事が出来ずに少しずつの疲労が溜まって来て居るような状態だったようなのですが……。
 それも、どうやら昨夜で一気に回復。

 但し、その所為か、それとも一人の部屋で眠った気の緩みからか、朝の一幕は、昨日、一昨日の朝よりも酷い醜態を晒す事と成ってしまったのですが。

「良い」

 そんな俺の問い掛けに対して、普段通りの少し素っ気ない、と表現される言葉使いで答えを返して来る有希。
 それに、そのような朝の一幕も、何故か彼女の世話焼きさんの一面が強調されるようで、こんな朝も悪くはない、と本当に思わせるに十分な状況を作り出して居るのも事実です。

 そう。本当に、元の世界に帰りたくなくなるような……。
 ……………………。
 ………………。

 尚、本日赴いた場所
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ